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不動産登記法改正|2026年スタートの住所・氏名変更登記を徹底解説

2026年4月から、不動産登記法改正に伴う所有者の住所・氏名変更登記が義務化されます。任意だった住所・氏名の変更登記が法的な義務になることから、不動産会社の実務にも影響を与えるでしょう。不動産会社や担当営業は、住所・氏名変更登記に備えた対応が求められます。

本記事では、住所・氏名変更登記義務化の背景や内容、これまでの改正履歴、今から行うべき具体的な対策などをわかりやすく解説します。とくに、相続で所有者になった方が顧客にいる場合は、参考にしてください。

目次[非表示]

  1. 1.【2026年】住所・氏名変更登記の義務化をわかりやすく解説
    1. 1.1.不動産所有者の住所・氏名変更は2年以内の登記を義務化
    2. 1.2.住所・氏名変更登記を怠ると過料の可能性も
  2. 2.住所・氏名変更登記の義務化が対象外になる「スマート変更登記」
    1. 2.1.個人でスマート変更登記を活用する流れと方法
    2. 2.2.法人でスマート変更登記を活用する流れと方法
    3. 2.3.スマート変更登記が活用できないケース
  3. 3.不動産登記法の過去と未来|施行時期や改正内容まとめ
    1. 3.1.不動産登記法の施行時期と背景
    2. 3.2.不動産登記法改正のきっかけは所有者不明土地の増加
    3. 3.3.近年の不動産登記法改正履歴
    4. 3.4.今後の不動産登記法改正動向
  4. 4.不動産登記法改正で不動産会社が得られるメリット
    1. 4.1.登記支援サービスで差別化できる
    2. 4.2.取引のスムーズ化で業務効率がアップ
  5. 5.今から行うべき不動産会社の実務対応4選
    1. 5.1.登記名義・本人確認の徹底
    2. 5.2.顧客説明ツールの作成
    3. 5.3.社内フローの見直しとシステム活用
    4. 5.4.司法書士と連携を強化して業務リスクを最小化
  6. 6.住所・氏名変更登記を理解して顧客を適切にサポートしよう!
  7. 7.不動産登記法改正でよくある疑問
    1. 7.1.不動産の住所・氏名変更登記は取引前でも必要?
    2. 7.2.2026年以前に変更した内容にも登記義務がある?
    3. 7.3.売主が変更登記に非協力的な場合の対応は?

【2026年】住所・氏名変更登記の義務化をわかりやすく解説

今回の不動産登記法改正では、住所・氏名変更登記が義務化されました。改正後は、「住所・氏名を変えたまま放置」という状態の解消が期待されています。改正された住所・氏名変更登記の義務化について、具体的に見ていきましょう。

不動産所有者の住所・氏名変更は2年以内の登記を義務化

令和8年4月1日より施行される住所・氏名変更登記は、変更日から2年以内の登記が義務化されます。また、義務化の対象には施行日以前の変更も含まれ、施行日から2年間の猶予期間が与えられます。以下は、変更タイミングと変更登記の期限です。

住所・氏名変更のタイミング

変更登記の期限

令和8年4月1日以降に住所・氏名を変更(施行後)

変更日から2年以内

令和8年3月31日以前に住所・氏名を変更(施行前)

令和10年3月31日まで(施行日から2年以内)

参考:法務局|住所等変更登記の義務化特設ページ

施行後の住所・氏名変更は「変更日から2年以内」、施行前は「令和10年3月31日まで」に登記しなければいけないことを覚えておきましょう。

住所・氏名変更登記を怠ると過料の可能性も

正当な理由なく住所・氏名変更登記を怠った場合は、5万円以下の過料に科される可能性があります。正当な理由とは、以下の内容です。

  1. 検索用情報の申出又は会社法人等番号の登記がされているが、登記官の職権による住所等変更登記の手続がされていない場合
  2. 行政区画の変更等により所有権の登記名義人の住所に変更があった場合
  3. 住所等変更登記の義務を負う者自身に重病等の事情がある場合
  4. 住所等変更登記の義務を負う者がDV被害者等であり、その生命・身体に危害が及ぶおそれがある状態にあって避難を余儀なくされている場合
  5. 住所等変更登記の義務を負う者が経済的に困窮しているために登記に要する費用を負担する能力がない場合

引用:法務省|住所等変更登記の義務化について

ただし、登記官による過料通知(裁判所への通知)は、すぐに行われるわけではありません。義務違反者に対して相当な期間を定めて履行を促したにもかかわらず、正当な理由なく期間内に登記されなかった場合に限られます。

住所・氏名変更登記の義務化が対象外になる「スマート変更登記」

「スマート変更登記(令和8年4月1日~)」を活用すれば、将来の住所・氏名変更登記が不要になります。スマート変更登記は、住所・氏名変更登記の義務化による所有者負担の軽減を目的に導入される制度です。法務局へ「検索用情報(氏名、ふりがな、生年月日など)」を事前に提供することで、自分で変更登記しなくても自動的に更新してくれます。

個人でスマート変更登記を活用する流れと方法

個人でスマート変更登記を活用する場合の、流れは以下のとおりです。

スマート変更登記の流れ(個人)出典:法務局|職権による住所等変更登記の手続イメージ(自然人の場合)

  1. 法務局に「検索用情報」を申出
  2. 法務局が定期的に住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)を照会
  3. 変更登記の意思確認
  4. 登記官が職権で登記簿の情報を更新

なお、タイミング次第で登記方法が異なるため、以下を確認しておきましょう。

所有権の名義人になるタイミング

登記方法

令和7年4月21日以降

登記申請書に、新たな所有者の氏名・住所・氏名のふりがな・生年月日・メールアドレス等をあわせて記載し申請

令和7年4月21日以前

かんたん登記申請」のページまたは書面にて検索用情報を提供

参考:法務局|スマート変更登記のご利用方法

法人でスマート変更登記を活用する流れと方法

法人でスマート変更登記を活用する場合の、流れは以下のとおりです。

出典:法務局|職権による住所等変更登記の手続イメージ(法人の場合)

  1. 「会社法人等番号の登記」を行う
  2. 住所や名称などの変更があった際、登記システムに通知
  3. 法務局が職権により変更登記を実施

法人に関しても、タイミング次第で登記方法が異なるため、事前に確認しておくと良いでしょう。

所有権の名義人になるタイミング

登記方法

令和6年4月1日以降

登記申請書に、新たな所有者の名称・住所・会社法人等番号をあわせて記載し申請

令和7年4月1日以前

「会社法人等番号の申出」を、オンラインまたは書面により行う

参考:法務局|スマート変更登記のご利用方法

スマート変更登記が活用できないケース

以下のケースでは、法務局が住所等を確認できないため、スマート変更登記が活用できません。

  • 海外に居住している個人
  • 会社法人等番号のない法人

上記のケースに当てはまる場合は、ご自身で住所・氏名変更登記を行う必要があります。

不動産登記法の過去と未来|施行時期や改正内容まとめ

不動産登記法は、「任意」中心だった登記から段階的に「義務」へと移行しています。このように移行してきた不動産登記法施行の背景や改正履歴などを見ながら、今後について解説します。

不動産登記法の施行時期と背景

不動産登記法の原型となる登記法は、明治19 年(1886年)に制定されました。登記法が施行された背景には、土地取引の増加に伴い、これまでの公証制度(明治6年創設)に多くの問題があったためです。具体的には、公証事務の不備や詐欺の続出、帳簿検索の不便さなどがありました。

さらに、当時は「民法が存在しない」という制度上の問題も抱えていました。民法には、不動産の権利に関する重要なルールが定められています。明治31年(1898年)に民法が施行された後、翌年の明治32年(1899 年)に旧不動産登記法が施行されました

民法の後に施行された不動産登記法は、「民法をより良く機能させ、取引の安全性とスムーズさを確保するため」に必要な法律です。

参考:国土交通省|我が国の不動産登記制度の沿革について -所有者不明土地問題資料-

不動産登記法改正のきっかけは所有者不明土地の増加

不動産登記法が改正された主な背景には、所有者不明土地の増加があります。所有者不明土地とは、相続等による所有権移転登記が未了のまま放置された結果、土地所有者の特定や接触が困難になっている土地のことです。

国土交通省の「所有者不明土地の実態把握の状況について」によると、所有者不明土地は約410万ha(九州全土よりも広い)に達しています。所有者不明土地が増加してきた主な原因は、登記申請が任意でありメリットが少なかったためです。

日本では戸籍制度により相続関係を容易に証明できるため、相続人が登録免許税や登記費用を負担してまで、すぐに所有権移転の登記を申請しなくても良い状態でした。結果的に登記が未了のまま放置されやすくなったことで、所有者不明土地が増加しました

国は所有者不明土地を減らすため、状況に応じた不動産登記法の改正を行っています。

近年の不動産登記法改正履歴

近年の主な不動産登記法改正履歴は、以下のとおりです。

改正年

主な改正内容

平成16年(2004年)

「新法」と言えるほどの大改正が行われ、電子化と登記の信頼性向上を両立させるための基盤を築きました。

  • オンライン申請の導入
  • 出頭主義の廃止
  • 登記識別情報制度の導入
  • 保証書制度の廃止と本人確認制度の強化
  • 登記原因証明情報必要的提供制度の導入 など

令和3年(2021年)

所有者不明土地が年々増加しているなか、より良い解決策として改正されています。

  • 相続登記の申請義務化(施行:令和6年4月1日~)
  • 住所・氏名変更登記の申請義務化(施行:令和8年4月1日~)

不動産登記法の改正により、所有者不明土地問題の解決に注目が集まっています。

参考:国土交通省|我が国の不動産登記制度の沿革について -所有者不明土地問題資料-
東京財団|不動産登記制度の沿革と役割
   

今後の不動産登記法改正動向

今後は、今以上に登記手続きの簡素化やデジタル化に関する改正が行われるでしょう。国土計画協会の「最終報告概要」では、2040年までに所有者不明土地が約720万ha(参考:北海道本島の土地面積:約780万ha)まで、増加することが予測されています。

このような現状の解決策として、登記官の職権によるスマート登記制度(令和8年4月~)が始まります。将来的に登記手続きの簡素化やデジタル化が進めば、所有者情報の自動更新や取引時点での即時登記が行えるようになるかもしれません。

今後も不動産登記法の改正には要注目です。

不動産登記法改正で不動産会社が得られるメリット

不動産登記法の改正は、不動産会社にとっても恩恵を与えてくれます。不動産登記法の改正により、不動産会社が得られるメリットは主に3つです。

登記支援サービスで差別化できる

不動産会社による登記支援サービスは、他社との差別化につながるでしょう。たとえば、登記の手順をわかりやすく説明したガイド資料の配布であったり、無料相談会を実施したりすれば顧客の信頼構築に役立ちます。

とくに、高齢者や不動産の相続・譲渡を検討している顧客にとっては、非常に価値のあるサポートになります。このような登記支援サービスの実施は、「法改正に強い不動産会社」としてブランディングができ、リピートや紹介にもつながるでしょう。

取引のスムーズ化で業務効率がアップ

法改正によって登記手続きの簡略化やデジタル化などが進めば、売買契約・抵当権設定などの各種手続きがスムーズになります。将来的には、所有者情報の自動更新や登記簿の即時反映が可能になる可能性もあります。

実現すれば、実務手続きが効率化され、確認作業や書類準備の手間が大幅に削減されるでしょう。不動産会社にとっては、顧客対応の迅速化と取引トラブルの抑制が期待でき、業務効率や生産性の向上につながります。

法改正による変化をいち早く察知し、先行して社内体制を整えておくことは、自社の競争力を高めるうえで大切です。

今から行うべき不動産会社の実務対応4選

不動産登記法の改正で、不動産会社が行うべき実務対応を4つ解説します。今後も状況に応じて改正されることが予想されるため、今できることから始めていけば、変化に対応できるようになります。

登記名義・本人確認の徹底

契約前または契約時に、登記簿上の名義人・住所・氏名と現状の情報が一致するかを確認するチェック体制を強化しましょう。とくに、売主側で複数回の相続が発生していたり、転居・改姓などの変更があったりする場合、登記簿との不一致が発生しやすくなります

不一致があるまま契約手続きに進むと、登記申請時に修正が発生し、取引が長引いてしまいます。確認作業は媒介契約締結時・売買契約時・引き渡し前の3段階で行い、本人確認書類や住民票との突き合わせを徹底しましょう。

確認結果を記録・保管する仕組みもあわせて整えると、将来的にトラブルが発生しても確認や対応が行いやすくなります。

顧客説明ツールの作成

売主・買主向けに、改正内容をわかりやすく解説した資料の作成を行いましょう。A4サイズのリーフレット、図解入りのPDF資料、チェックリスト付きの解説チラシなど、紙・デジタル両面で活用できる形式が望ましいでしょう。

とくに、高齢者や制度に不慣れな顧客にとって、視覚的に理解できるツールは安心感を与えます。また、自社のロゴや連絡先を記載すれば、信頼性のある専門家として認識されやすくなります。資料を通じて顧客との接点を増やし、信頼関係の構築を強化しましょう。

社内フローの見直しとシステム活用

不動産登記法の改正に応じて、社内フローの見直しと可視化を行いましょう。担当者ごとに対応が異なると、対応漏れや情報共有ミスが発生しやすくなります。一連のフローを、チェックリストやマニュアルを整備しながら明文化して可視化することが重要です。

さらに、クラウド型の顧客管理システム(CRM)を活用し、登記状況や変更履歴を一元管理することで属人化を防げます。通知機能やステータス表示なども活用すれば、確認漏れの防止や進捗管理にも役立つでしょう。

司法書士と連携を強化して業務リスクを最小化

登記の専門家である司法書士と連携を強化し、リスクを最小化に抑えましょう。不動産会社がすべてを単独で対応するには限界があるため、司法書士との連携が必須です。

日常的に相談できる関係性を築いておくことで、顧客対応のスピードと正確性が大幅に向上します。さらに、定期的な情報交換や共催セミナーを行えば、自社スタッフの法改正に関する知識向上も図れるでしょう。

取引前のチェック体制や契約書面の内容に専門家の意見を取り入れることで、後々のトラブルを未然に防ぎ、自社のリスクマネジメントに貢献してくれます。

住所・氏名変更登記を理解して顧客を適切にサポートしよう!

2026年4月から始まる住所・氏名変更登記の義務化は、増加し続ける所有者不明土地問題の解消に向けた施策です。このような不動産登記法の改正は、不動産会社にとって単なる実務負担の増加ではありません。

スマート変更登記などの新制度をいち早く理解し、登記支援サービスや顧客説明ツールを整備することで、業務効率化と他社との差別化を図る絶好の機会になります。社内フローの見直しや司法書士との連携強化なども行うと、取引がスムーズに行えるようになります。

スムーズな取引の実現やサポート体制が整えば、顧客からの信頼獲得につながり、売上アップに貢献してくれるでしょう。

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不動産登記法改正でよくある疑問

不動産の住所・氏名変更登記は取引前でも必要?

はい。登記簿上の住所・氏名が実際と異なる場合、事前に変更登記を行ってもらうことで、取引がスムーズに取引が行えます。取引の初期段階で登記簿情報と顧客情報を確認し、必要であれば早めに司法書士へ依頼するなどを行えばリスクを回避できます。

2026年以前に変更した内容にも登記義務がある?

はい。2026年4月1日以降の変更だけでなく、義務化前の変更で未登記の内容も対象になります。顧客が住所・氏名の変更登記をしていないことがわかった時点で、適切なサポートをすることが信頼構築につながります。

売主が変更登記に非協力的な場合の対応は?

売主が住所・氏名変更登記に非協力的な場合は、義務化の事実や罰則などを丁寧に説明し、理解してもらうことが重要です。どうしても応じてもらえない場合は、司法書士に相談のうえ、売主側に直接説明してもらったり、条件付きで契約を進めたりするという選択肢もあります。

ラルズネット編集部
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