
抵当権設定の登録免許税とは?支払う時期・計算方法もやさしく解説
住宅ローンを利用して不動産を購入する際、多くのケースで「抵当権設定登記」が行われ、そのたびに国税である登録免許税が発生します。現在は、自己居住用住宅を対象とした登録免許税の軽減措置が設けられ、抵当権設定の税率が0.4%から0.1%に下がるケースもあります。ただし、軽減措置には2027年3月31日までという期限がある点に注意が必要です。
税率や課税標準を正しく理解していないと、本来使えたはずの軽減措置を逃し、数万円単位で余計な負担を生じさせてしまう場合があります。不動産会社の担当者にとって、「いつ・いくら・誰が払うのか」を説明できるかどうかは、顧客からの信頼にも直結するポイントです。
本記事では、抵当権設定の登録免許税に関する基本から、軽減措置の条件・計算方法・支払うタイミングまでを解説します。お客様への説明や資金計画のサポートの質がアップする内容になっていますので、ぜひ最後までご覧ください。
抵当権設定の登録免許税とは?基本をやさしく解説

住宅を購入して住宅ローンを借りるとき、金融機関は不動産を担保として「抵当権」を設定します。抵当権設定の登記には「登録免許税」がかかるため、注意が必要です。
まずは、登録免許税が必要になる場面や、抵当権との関係性、税率の仕組みを整理しましょう。
登録免許税が必要になるタイミングと登記の関係
登録免許税とは、不動産の登記手続きにかかる国税です。新築や中古住宅の購入時には、以下の場面で発生します。
抵当権設定登記は、金融機関が貸し付けた金額を担保するために行う登記で、ローン実行前後のタイミングで登記されることがほとんどです。このとき、登録免許税の支払いが必要となります。
抵当権設定と住宅ローンのつながり
抵当権とは、住宅ローンの支払いができなくなった場合に備え、金融機関が不動産を担保にできる権利のことです。つまり、住宅ローンを組む人=抵当権の設定登記をする人になります。
抵当権設定を登記することで、金融機関は万が一の際に不動産を売却して回収できるようになります。そのため、抵当権設定登記は、住宅ローンを組む人にとって必須の手続きです。そして抵当権設定登記に対して課されるのが「登録免許税」です。
課税標準(債権額)と税率の考え方
登録免許税は、登記の内容と金額に応じて課税されます。抵当権設定の場合、基準となるのは借入金額(債権額)です。税額の計算式は、以下のとおりです。
登録免許税=債権額×税率(%)
抵当権設定登記の税率は、以下のように定められています。
たとえば、3,000万円の住宅ローンを借りて抵当権を設定する場合、以下の計算式になります。
通常:3,000万円×0.4%=12万円
軽減あり:3,000万円×0.1%=3万円
軽減措置が適用されるだけで、負担額にこれだけの差が生まれます。
参照| 国土交通省:住宅関連の登録免許税の特例
登録免許税の軽減措置|要件と期限を確認

抵当権設定の登録免許税は、通常0.4%ですが、住宅ローンの利用など一定の条件を満たすと、税率が0.1%に軽減されます。軽減措置は、正しい書類をそろえて登記することで適用できるため、不動産会社としても必ず押さえておきたいポイントです。
ここでは、軽減措置が使える条件や必要書類、そして気をつけたい期限について解説します。
軽減措置が使える対象と条件を整理
登録免許税の軽減措置が使えるのは、自己居住用住宅の取得・新築のために借り入れた資金に抵当権を設定する場合です。法人名義や投資目的の住宅には適用されません。
以下が主な適用条件です。
※軽減措置は、所有権移転登記や保存登記と同じく、「住宅用家屋」であることが前提です。
住宅ローンを借りる顧客の多くが対象となりますが、タイミングや面積、名義の要件を外れると適用されません。とくに「登記が1年を超えた場合」は、申請しても軽減されませんので注意が必要です。
住宅用家屋証明の取り方と必要書類
軽減措置を受けるには、住宅用家屋証明書を取得し、登記時に添付する必要があります。住宅用家屋証明書は、建物所在地の市区町村役場で発行できます。主な提出書類は以下のとおりです。
証明書の発行手数料は、数百円~1,000円程度が一般的です。なお、自治体によってはオンライン申請に対応しているケースもあります。
適用期限はいつまで?2027年3月31日の注意点
軽減措置は、税制特例措置として期限が定められています。適用期限は登記の申請日が基準で、2027年3月31日までに申請された登記が対象です。購入日や建築日ではなく、登記申請日で判断される点に注意が必要です。
つまり、取得や建築の時期ではなく、登記申請日が基準になります。2027年4月1日以降に登記した場合、たとえ期限前に購入していても軽減措置は使えません。とくに、3月末は登記申請が混み合う傾向があるため、対象の物件を扱う際は早めに段取りを組んでおくことをおすすめします。
登録免許税の計算方法|失敗しない基本と例

登録免許税は、「何に対して」「どの税率をかけるか」を理解できれば、計算そのものはそれほど難しくありません。ただし、税率の違いや端数処理のルール、軽減措置の有無によって、結果に大きな差が出るため注意が必要です。
ここでは、基本の計算式・具体例・便利なツールの活用法について、順を追って解説します。
税額は「課税標準×税率」:抵当権設定の基礎
登録免許税の計算に使う「課税標準」は、登記の種類によって異なります。抵当権設定の場合は、債権額(=住宅ローンの借入額など)がそのまま課税標準となります。計算式は次のとおりです。
登録免許税=債権額×税率(%)
たとえば、3,000万円の住宅ローンを借りて抵当権を設定する場合、通常の税率(0.4%)だと以下の金額になります。
3,000万円×0.4%=12万円
軽減措置(税率0.1%)が使えた場合は、以下の金額になります。
3,000万円×0.1%=3万円
上記の差額は9万円です。物件価格が高額になるほど、軽減措置の効果は大きくなります。
軽減あり/なしでどう変わる?金額シミュレーション
以下は、借入金額ごとの登録免許税のシミュレーションです。
軽減措置が使えるかどうかで、10万円以上の差が出るケースもあります。買主にとっては無視できない金額のため、事前の確認がとても重要です。
登録免許税の計算ツールの正しい使い方とチェックポイント
インターネット上には「登録免許税の自動計算ツール」が数多くあります。とくに司法書士事務所や不動産会社が提供しているものは、ある程度信頼できます。ただし、ツールを使うときには以下の点に注意しましょう。
【ツール利用時のチェックポイント】
課税標準=債権額であることを前提に入力する
固定資産税評価額と混同しない
軽減措置の有無を自分で選択する必要がある
端数処理(100円未満切り捨て)に対応しているか確認する
最新の税率・適用期限に対応しているか(2027年3月31日までなど)
たとえば、「借入額5,000万円」「住宅用家屋証明あり」と入力すれば、軽減後の税額が「5万円」と表示されれば正しく計算できています。
とはいえ、最終的には法務局での判断が優先されるため、正式な登記前には司法書士への確認も忘れずに行いましょう。
登録免許税はいつ払う?支払いの流れ

登録免許税は、登記申請と同時に支払うのが原則です。申請先は、物件所在地を管轄する法務局です。支払い方法は「収入印紙」と「電子納付」の2通りあり、登記の申請方法や事務所の運用によって異なります。ここでは、支払うタイミングと方法、そして法務局での流れをわかりやすく整理します。
登記申請と同時に納付するのが基本
登録免許税は、登記申請書と一緒に収入印紙を貼付して納付するか、オンライン申請の場合は電子納付(ペイジー連携)で支払います。原則としては、登記申請時に一括で納付することが義務付けられています。
登記申請の流れは、以下のとおりです。
登記に必要な書類をそろえる
納税額を確認(司法書士が計算するのが一般的)
納付方法を決める(印紙or電子納付)
登記申請と同時に登録免許税を納める
とくに住宅ローンを利用する場合は、融資実行日と同日に登記を行うスケジュールが多く、司法書士や金融機関との連携が重要になります。
収入印紙・電子納付など支払い方法の選び方
登録免許税の納付方法は、主に以下の2つがあります。
収入印紙の場合は、郵便局や法務局の売店などで必要額の印紙を購入し、申請書または「登記申請用台紙」に貼りつけて提出します。電子納付の場合は、事前に金融機関やペイジー連携を使って納税し、証明書(領収済通知書)を登記申請書に添付する流れです。
登記手続きを司法書士に依頼している場合は、ほとんどが電子納付または収入印紙で対応されます。しかし、税額が3万円以下のときは収入印紙での納付が認められています。
法務局での手続きと地域窓口の探し方
登記申請は、不動産の所在地を管轄する法務局(登記所)で行います。全国にある法務局は「不動産登記」の専門窓口を設けており、窓口申請とオンライン申請の両方に対応しています。
申請の方法は次の2種類です。
窓口申請(紙で提出)
→収入印紙を貼付して持参オンライン申請(電子申請)
→電子納付とPDF添付で完結
一般の方が登記を行うのは難しいため、通常は司法書士に依頼するのが一般的です。また、法務局の所在地や管轄エリアは、法務省のHPで調べられます。「管轄一覧から探す」「地図から探す」で検索すると、地元の法務局情報がすぐに確認できます。
抵当権設定の費用は誰が払う?内訳と相場

住宅ローンを組む際には、抵当権の設定登記が必要になり、そこには登録免許税だけでなく司法書士報酬や書類取得費用など、さまざまな費用がかかります。ここでは、誰が費用を負担するのか、どんな内訳があるのかをわかりやすくご紹介します。
登録免許税の負担者の考え方(買主負担が一般的)
登記に関する費用(登録免許税や司法書士報酬)は、登記の名義人が負担するのが原則です。抵当権設定登記では、住宅ローンを利用する買主(住宅ローン契約者)が登記名義人となるため、登録免許税は買主が負担するのが一般的です。
また、以下のケースでも、ほとんどが買主負担として取り扱われます。
銀行ローンやフラット35などの住宅ローン利用する場合
不動産会社経由で住宅を購入した場合
建売住宅などで売主が手続き代行する場合
ただし、契約内容によっては例外もあるため、売買契約書や重要事項説明書に記載されている負担区分を確認することが大切です。
司法書士報酬の目安と見積もりの見方
抵当権設定の登記手続きは、通常、司法書士に依頼して進めます。登記手続きの費用は、「登録免許税」+「司法書士報酬」+「実費」などに分かれます。司法書士報酬の相場は以下のとおりです。
上記はあくまで参考値であり、地域や案件の複雑さ、事務所の規模によっても差が出ます。登記件数が複数ある場合(例:土地と建物が別登記)や、急ぎの対応を依頼する場合は、追加費用が発生することもあります。
契約書で確認しておきたい費用項目
実務では、登記や登録免許税の負担者を事前に契約書で明示しておくことが重要です。以下の文言が盛り込まれているか、チェックしておきましょう。
上記を曖昧にしてしまうと、引き渡し直前のトラブルのもとになります。営業担当としても、「見積書に含まれている費用が何か」を把握しておくと安心です。
所有権移転登記との違い|同時にかかる税金を整理

住宅を購入するとき、多くの場合で「所有権移転登記」と「抵当権設定登記」を同じタイミングで行います。それぞれの登記に登録免許税がかかるため、費用が思った以上に大きくなることがあります。
ここでは、所有権移転登記と抵当権設定登記の違いを整理し、それぞれの登録免許税について具体的に見ていきましょう。
抵当権設定と所有権保存・移転の違い
まずは、それぞれの登記がどのようなものかを比較してみましょう。
所有権保存・移転登記は、不動産の所有者を明確にするための登記で、抵当権設定登記は、住宅ローンのために不動産へ担保を設定する登記です。どちらも所有権やローン実行に関係する重要な手続きであり、同時に行うことがほとんどです。
所有権移転の登録免許税と軽減のポイント
所有権移転登記にも登録免許税がかかりますが、条件を満たせば軽減措置を受けられます。主な税率は以下のとおりです。
たとえば、中古住宅を2,000万円で購入した場合、軽減措置を受けると以下の税額になります。
所有権移転登記:2,000万円×0.3%=6万円
抵当権設定登記(ローン2,000万円):2,000万円×0.1%=2万円
合計で8万円になります。購入価格と借入金額に対してそれぞれ課税されるため、合算での資金計画が必要です。
所有権移転の計算方法を表で比較
最後に、抵当権設定と所有権移転登記を、税率や課税標準の違いで比較してみましょう。
不動産会社としても、買主の総負担額を事前に説明するうえで重要な知識です。それぞれの計算対象(課税標準)が異なること、軽減措置が期限付きであることをしっかり理解しましょう。
抵当権移転・相続のときは?知っておきたい注意点

不動産を所有している間に、金融機関の変更や相続が発生するケースも少なくありません。上記の場合には、「抵当権の移転」や「相続登記」が必要となり、同様に登録免許税がかかります。
抵当権設定とは異なるルールがあるため、誤解や説明ミスを防ぐためにも正確な理解が必要です。ここでは、抵当権移転・相続時の登録免許税について、基本的な考え方と注意点を整理します。
抵当権移転の登録免許税と手続きの流れ
抵当権移転登記とは、抵当権の権利者(通常は金融機関)が変更されるときに行う登記です。たとえば、以下のケースが該当します。
住宅ローンを別の金融機関に借り換えた
抵当権を設定していた金融機関が合併・譲渡された
抵当権を譲渡・売却した場合(不良債権化など)
抵当権移転登記の登録免許税は、登録免許税法別表第一で定められており、一般的に以下のようになります。
課税標準は、もともとの抵当権の被担保債権額(借入金額)となります。たとえば、2,000万円の債権を別の金融機関に移す場合、税額は以下になります。
通常の移転:2,000万円×0.2%=4万円
相続や合併:2,000万円×0.1%=2万円
金融機関の事情により移転登記が必要になるケースでは、買主に費用負担がかかる場合もあるため、事前に契約を確認しておくことが重要です。
相続登記の登録免許税と免税・軽減の概要
不動産の所有者が亡くなった場合、法定相続人による「相続登記」が必要になります。相続登記にも登録免許税がかかりますが、2024年から相続登記の義務化が始まったことにより、制度も変わってきています。
【相続登記の基本情報】
登録免許税:不動産の固定資産税評価額×0.4%
価額100万円以下の土地の相続登記などで登録免許税が免除される特例あり
免税措置の期限:2027年3月31日登記分まで(予定)
また、2024年以降、相続が発生してから3年以内に相続登記を申請することが義務化されました。不動産会社として、相続物件の売却サポートなどを行う場合は、相続登記の義務化にも触れて説明できると信頼感につながります。
実務でよくあるつまずきと対処法
抵当権移転や相続登記に関して、現場でよくあるトラブル・つまずきポイントは次のとおりです。
【よくある例と対応策】
登録免許税の正しい理解で顧客提案を一歩先へ

今回は、住宅ローンにともなう抵当権と登録免許税の基本と実務上の注意点について解説しました。税率は債権額に一定の割合をかけるシンプルな仕組みですが、住宅用家屋の要件や登記のタイミング次第で負担が大きく変わります。
とくに、抵当権設定 登録免許税は軽減措置の有無や期限(登記申請日が基準)、支払い方法、誰が負担するかで誤解が起きやすい部分です。
債権額×税率、100円未満切り捨てなどの基本を押さえつつ、シミュレーションや計算ツールを使って資金計画までサポートすれば、提案力の差別化につながるでしょう。
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よくある質問
登録免許税の納付書の書き方に注意点はありますか?
登録免許税の納付書には、「登記の目的」や「課税標準」「税額」などの記入欄があります。誤りや記入漏れがあると登記申請が受理されないこともあるため、司法書士や金融機関と連携して記入内容を確認するのがおすすめです。なお、抵当権設定の場合は、課税標準額に債権額(借入金額)を記入するようにしましょう。
登録免許税の納付方法にはどんな種類がありますか?
登録免許税の納付方法は以下の2通りです。
収入印紙による納付(紙の申請時によく利用)
電子納付(ペイジー連携)(オンライン申請時に利用)
現在は電子申請が主流になりつつありますが、3万円以下の納税であれば収入印紙を使うケースもまだ多くあります。
中古住宅でも登録免許税の軽減措置は受けられますか?
中古住宅でも、一定の条件を満たしていれば登録免許税の軽減措置を受けられます。主な要件は次のとおりです。
上記を満たしていれば、中古住宅でも軽減措置の対象になります。
登録免許税の軽減措置は登記後でも適用されますか?
登記完了後に軽減措置をさかのぼって適用することはできません。軽減措置を受けるには、登記申請時に住宅用家屋証明書を添付する必要があります。申請タイミングを逃すと本則の税率(0.4%)が適用されてしまうため、事前の準備がとても重要です。
抵当権設定の登録免許税は借り換え時にもかかりますか?
抵当権設定の登録免許税は、借り換え時にも新たにかかります。課税標準は新しい借入金額(債権額)です。ただし、借り換えによる抵当権設定は軽減措置(0.1%)の対象外で、通常は0.4%となります。
旧抵当権の抹消登記(登録免許税:不動産1個につき1,000円)とセットで行われるため、トータルの費用感を事前に見積もっておくと安心です。









