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不動産売却・賃貸の仲介手数料の上限引き上げ!改定内容とメリット

2024年7月、不動産業界において行われた重要な改定が「仲介手数料の上限引き上げ」です。とくに、空き家等の売買や長期間使用されていない物件の賃貸仲介に関するルールが大きく変更され、手数料の上限額が引き上げられました。

これにより、不動産会社の仲介業務の収益性が改善し、これまで流通しにくかった安価な空き家等の売買や賃貸が活発になることが期待されます。今回は、仲介手数料改定の背景や具体的な内容、不動産売買や賃貸市場に与える影響について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

住宅・土地統計調査から見る空き家の現状

住宅・土地統計調査から見る空き家の現状

仲介手数料改定の背景には、日本における住宅事情の変化があります。総務省統計局が5年に1度実施している「住宅・土地統計調査(2023年)」によると、日本の住宅総数は増加傾向にあり、過去5年間で261万戸増加しました。

一方、空き家率は13.6%(2018年)から13.8%(2023年)へと横ばいで推移しているものの、空き家の総数自体は5年間で50万戸増加しています。データが示すように、空き家は増加傾向にあるものの、流通が少ない状況でした。

このような状況を打破するために改定されたのが、不動産会社の「仲介手数料の上限引き上げ」です。

改定された仲介手数料の上限

2024年7月の改定により、「売買・賃貸」の両方において仲介手数料の上限が引き上げられました。それぞれ仲介手数料が、どのように改定されたのかを見ていきましょう。

売買仲介の改定:800万円以下の物件は上限30万円に引き上げ

売買仲介における手数料が「800万円以下の物件:30万円+消費税」へと変更されました。今までの仲介手数料は、以下のとおりです。

売買価格

旧手数料上限

400万円超

売買価格の3%+6万円+消費税

200万~400万円

売買価格の4%+2万円+消費税

200万円以下

売買価格の5%+消費税

これまでの旧手数料では、安価な空き家等の仲介に対する報酬が不十分という問題がありました。たとえば、物件価格が200万円の場合、仲介手数料は11万円(税込み)です。仲介手数料が低すぎると業務負担に対して報酬が見合わないため、不動産会社は安価な空き家等の仲介を避ける傾向にあります。

しかし、仲介手数料の上限が引き上げられたことで、安価な空き家等の仲介が積極的に行われるようになりました。なお、800万円以下の物件であれば戸建て・マンション・宅地など空き家でなくても適用可能です。

賃貸仲介の改定:長期間空室の物件は貸主から2か月分の手数料を受領可能に

賃貸仲介の改定:長期間空室の物件は貸主から2ヶ月分の手数料を受領可能に

これまでの賃貸仲介における手数料は「貸主・借主の合計で家賃の1.1か月分(税込み)以内」です。しかし、長期間空室の物件は借主が見つかりにくく、賃貸仲介会社にとっても利益が出にくい状況でした。

そこで「長期間未使用(1年以上空室)の物件は、貸主から最大2.2か月分(税込み)の仲介手数料を受領可能」という内容に改定。国土交通省の「<消費者の皆様向け>不動産取引に関するお知らせ」に掲載されている図を見ると、わかりやすいでしょう。

項目

旧ルール

新ルール

通常の賃貸物件

借主・貸主の合計で1か月分の1.1倍以内

変更なし

1年以上空室の物件

なし

借主+貸主で2.2か月分まで可能

(貸主から2.2か月分の受領可)

改定のポイントは、以下のとおりです。

  • 1年以上、空室のある物件が対象(将来的に使用見込みがない物件も含む)
  • 借主の負担を増やさずに、貸主からの手数料を増額
  • 賃貸仲介会社が空き家等の賃貸募集を積極的に行いやすくなる

改定により、賃貸市場でも空き家の流通量アップが期待されています。

仲介手数料改定による影響とメリット

仲介手数料の改定により、不動産市場に変化がもたらされています。とくに、空き家等の売買や長期間空室の賃貸物件において、流通が促進され始めました。ここでは、不動産業界への影響と空き家所有者へのメリットを解説します。

不動産業界への影響

今回の改定により、空き家等の売買や賃貸の流通が活発化し、不動産市場全体が拡大すると見られます。従来は、安価な物件の仲介手数料が低すぎるため、不動産会社にとって採算が合わず、取り扱いを避けるケースが少なくありませんでした。

しかし、800万円以下の売買物件で仲介手数料の上限が「30万円+消費税」に引き上げられたことで、不動産会社が空き家等の取り扱いに積極的になってきています。また、相続登記が未了の物件や境界問題を抱える物件も売却の需要が高まり、スムーズに流通しやすくなるでしょう。

空き家所有者へのメリット

不動産会社が安価な空き家等の売却や賃貸に前向きになることで、流通が円滑になります。これまで「安すぎて売れない」と諦めていた物件も、積極的に取り扱われるようになり、買い手や借り手を見つけやすくなるでしょう。

また、長期間空室の賃貸物件では、貸主が支払う仲介手数料の上限が2か月分に引き上げられました。これにより、不動産会社が入居者募集に力を入れるため、成約の可能性が高まります。今回の改定を機に、空き家所有者は売却や賃貸の選択肢を広げ、不動産会社と相談しながら活用方法を検討すると良いでしょう。

不動産仲介手数料の改定を活かして空き家を有効活用しよう!

不動産仲介手数料の改定を活かして空き家を有効活用しよう!

2024年7月以降、不動産仲介手数料の改定により、以下のような売買・賃貸の両方で空き家等の流通を促進する仕組みが強化されました。

  • 売買:800万円以下の物件は、仲介手数料上限を「30万円+消費税」に引き上げ
  • 賃貸:1年以上空室の物件は、仲介手数料が貸主から「2か月分」まで受領可能

仲介手数料の引き上げにより、不動産会社の収益が向上し、価値の低い空き家等の流通が増えるでしょう。また、空き家等の所有者にとっても、今まで流通の少なかった物件が売却しやすくなるというメリットがあります。今回の改定は、全国的に増加する空き家問題の解決策としても有効であり、市場の活性化につながるでしょう。

ラルズネット編集部
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