
家族信託で不動産の管理・運用を!メリットや活用ポイントを解説
近年、家族信託の重要性が再認識されています。とくに、不動産を所有する高齢者には、認知症のリスクと相続問題が課題として挙げられるでしょう。これらの課題を解決するのに適しているのが家族信託です。
今回は、「高齢化社会と不動産の課題」や「家族信託の特徴、メリット、活用ポイント」などを詳しく解説します。家族信託を活用することで、将来的な資産管理の負担を軽減し、家族全員が安心して生活できるようになるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
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高齢化社会と不動産の課題
日本では高齢者人口が年々増加し、2025年には65歳以上が30%を超える見込みです。認知症患者も増加しており、2025年には730万人、軽度認知障害を含めると1,300万人(高齢者の3人に1人が認知症)に達すると予測されています。
高齢者は平均2,500万円の金融資産を持ち、9割以上が不動産を所有しているのが現状です。しかし、認知症により意思決定能力が喪失した場合、正常な判断が行えずトラブルになりやすいといえます。たとえば、金融機関の口座が凍結されたり、不動産売却ができなくなったりするでしょう。
成年後見制度があるものの、資産活用が制限されることも少なくありません。家族信託を活用することで、このようなリスクを回避し、柔軟で円滑な資産運用が実現できるでしょう。
家族信託とは?活用するメリット
家族信託とは、高齢者や資産を持つ個人が、信頼できる家族に財産(金銭や不動産など)の管理・運用を託す制度です。不動産の所有者(受益者)が認知症により意思能力を失った場合、売却や新たな契約の締結が困難になり、不動産の管理・運用ができなくなる可能性があります。
家族信託を設定するメリットは、所有者に代わって家族(受託者)が不動産を適切に管理・運用できるようになることです。また、手続きが比較的シンプルであり、費用面の負担が軽減されるというメリットもあります。ただし、適切な契約を交わさないと、後々のトラブルにつながることがあるため、慎重に進めることが大切です。
家族信託を進めるための主な流れ
次は家族信託を進めるための、主な流れを見ていきましょう。
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とくに、家族信託の経験が豊富な専門家に相談することが成功のカギです。信頼できる司法書士や税理士と連携して、早めの準備を進めましょう。
家族信託の活用事例
あるご夫婦が共有名義で所有する賃貸不動産の建替えを計画し、資金の半分を借入、半分を不動産売却で調達しました。建築が進み、中間金の支払いまで完了した矢先、奥様が脳梗塞で倒れ、意思能力を喪失。結果的に不動産の売却も金融機関からの借入も不可能となり、工事がストップしました。
このような事態を防ぐ解決策が「家族信託」です。不動産を信託財産として管理者(受託者)を設定すれば、所有者の意思能力が喪失しても家族が資産を管理・運用できます。たとえば、「ご主人:初代管理者・奥様:2代目・息子:3代目」とすることで、継続的な資産管理とスムーズな建替えが実現可能です。
家族信託を活用するためのポイント
家族信託を活用するためには、以下のポイントを意識しましょう。
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それぞれ解説していきます。
家族信託の目的を明確にする
家族信託は、目的に応じて設計する必要があります。とくに、高齢化社会により認知症患者が増加するなかで、相続が発生する前に資産が凍結されるリスクに備えることが重要です。
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家族と十分に話し合い、目的を明確にした上で信託契約を進めることが大切です。
受託者の選定は慎重に行う
受託者には、信託財産を管理・運用する重要な役割があります。そのため、以下のようなポイントを考慮しながら適任者を選ぶことが大切です。
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一般的に配偶者や子どもが受託者となることが多いものの、場合によっては専門家(司法書士や税理士など)に依頼することもあります。
信託契約の内容をしっかり決める
家族信託をスムーズに進めるためには、契約内容を具体的に決めることが重要です。
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契約内容に不備があると、意図しない財産の分配や相続トラブルの原因になります。専門家と相談しながら慎重に決めましょう。
家族信託を活用して不動産を守ろう!
家族信託は、高齢者の資産管理や相続対策として非常に有効な手段です。とくに、不動産を所有する高齢者にとっては、資産凍結や認知症リスクへの備えとして検討すべき制度といえるでしょう。実績のある専門家と連携し、計画的に進めることが成功のカギとなります。今後の高齢化社会に向けて、家族信託を活用した不動産の適切な管理・運用を行っていきましょう。