
賃貸退去理由ランキング|結婚・同棲、実家に戻る、住替など1位の理由は?
「え、また退去? 何も問題のない物件なのに…」
物件管理をしていて、このような違和感を覚えたことはありませんか?
このコラムでは、賃貸物件の「退去理由ランキングTOP10」をもとに、退去の原因を明らかにします。
退去理由の多くは、転勤や結婚などのライフイベントに起因するものですが、適切なフォローや対策次第で空室期間の短縮は十分可能。また「1年未満の早期退去」など、平均稼働率を下げるケースへの対策も紹介します。
退去理由を正しく把握し、適切な対策を講じることで、稼働率アップを目指しましょう。
目次[非表示]
- 1.賃貸物件の退去理由ランキングTOP10
- 1.1.退去理由ごとの改善施策の例
- 1.2.退去理由ランキングTOP10の詳細をチェック!
- 1.2.1.1位:転勤
- 1.2.2.2位:自宅購入
- 1.2.3.3位:実家に戻る・家族と同居
- 1.2.4.4位:結婚・同棲
- 1.2.5.5位:転職・退職・就職
- 1.2.6.6位:気分転換
- 1.2.7.7位:不要になった
- 1.2.8.8位:広い物件へ住み替え
- 1.2.9.9位:利便性などにより他地域へ
- 1.2.10.10位:安い物件へ住み替え
- 2.賃貸物件が1年以内に退去される理由は?
- 2.1.退去理由1: 騒音トラブル
- 2.1.1.【騒音トラブルの対策】
- 2.2.退去理由2:近隣トラブル
- 2.2.1.【近隣トラブルの対策】
- 2.3.退去理由3: 物件/設備トラブル
- 2.3.1.【物件/設備トラブルの対策】
- 3.不動産会社が退去理由を聞く方法は?
- 3.1.退去理由を確認する際は、プライバシーへの配慮を忘れずに
- 3.2.適切なヒアリング方法を選択する
- 3.2.1.退去理由の確認方法.1 対面
- 3.2.2.退去理由の確認方法.2 非対面ツール
- 4.退去理由をしっかり把握し、効果的な空室対策を
- 5.賃貸物件の退去理由|よくある質問
賃貸物件の退去理由ランキングTOP10
賃貸物件の退去理由を多い順に整理すると、以下のようなランキング結果となります。
ランキング |
項目 |
割合 |
1位 |
転勤 |
23.1% |
2位 |
自宅購入 |
12.5% |
3位 |
実家へ戻る・家族と同居 |
11.7% |
4位 |
結婚・同棲 |
10.9% |
5位 |
転職・退職・就職 |
8.3% |
6位 |
気分転換 |
6.8% |
7位 |
不要になった |
6.1% |
8位 |
広い物件へ |
6.1% |
9位 |
利便性等により他地域へ |
4.5% |
10位 |
安い物件へ |
2.2% |
引用:(公社)全日本不動産協会『退去を防ぐことは「究極の空室対策!」 〜入居者満足度を高めて入居率を維持する〜』
ランキングTOP10の内容を見てみると、多くの退去理由は管理会社の努力では防ぎきれないことがわかります。たとえば、「転勤」や「自宅購入」など、上位1〜5位の理由はライフイベントや環境の変化によるもので、避けようのないケースです。
さらに、「気分転換」や「不要になった」といった6〜10位の理由も、入居者側の個人的な事情によるものであり、管理会社が直接コントロールすることは難しいでしょう。
退去理由ごとの改善施策の例
一方で、退去のタイミングで適切なフォローをすれば、短期間で空室を埋められる可能性があります。以下はその一例です。
[退去理由:転勤のフォロー例]
転勤するということは、後任者がいる可能性も!ヒアリングで、その存在が確認できた場合、「ご紹介いただけませんか?」と一声かけるのも効果的です。
[退去理由:自宅購入のフォロー例]
入居者に対して、「一戸建ての購入や建築もご相談ください!」と日頃からアナウンスしておくことで相談されやすくなります。
[退去理由:結婚・同棲のフォロー例]
単身の入居者に対して、「別エリアや広い賃貸物件もご紹介可能!」と日頃からアナウンスしておくことで相談の依頼がきやすくなります。
退去理由ランキングTOP10の詳細をチェック!
先ほどご紹介した「退去理由ランキング」について、ここからは各項目を一つひとつ掘り下げて解説していきます。それぞれの理由がどのような背景で起こるのか、具体的にチェックしていきましょう。
1位:転勤
転居を伴う退去は、空室対策では防ぎにくいのが現実です。勤務先の異動によって通勤が困難になった場合、多くの入居者はやむを得ず新たな勤務地の近くへ引っ越すことになります。複数の調査でも「転勤」が退去理由の大半を占めるという結果もあり、影響力の大きい要因といえるでしょう。
2位:自宅購入
「自宅購入」を理由に退去するのは、とくに30代以降の入居者に多い傾向があります。なかでも目立つのが、結婚や出産といったライフイベントをきっかけに住宅を購入するケースです。住宅ローン減税などの政策の後押しで、自宅購入を決断する人も多いです。
3位:実家に戻る・家族と同居
入居者が賃貸生活をやめる理由は実にさまざま。経済的な事情や親の介護、結婚に伴う同居などの理由で、住環境が大きく変化します。近年では、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが一般化したことにより、都心を離れ、実家に戻ったり、田舎暮らしを始めたりする入居者もいます。
4位:結婚・同棲
結婚や同棲をきっかけに賃貸物件を退去するケースも少なくありません。結婚や同棲をする人のニーズには、「より広い住空間が必要になった」「お互いの勤務地に通いやすい場所へ移りたい」などがあります。そもそも単身者向けの賃貸物件では、2人で住むことができないケースも多く、住み替えは自然な選択肢となります。
5位:転職・退職・就職
転職や退職も、賃貸物件を退去するきっかけとなります。転職によって通勤ルートや所要時間が大きく変わる場合、より通いやすい場所へ住み替えるのは自然な流れです。大学周辺の賃貸物件では、4年生が卒業と同時に一斉退去するケースも珍しくありません。
6位:気分転換
「なんとなく気分を変えたくて引っ越す」といった、明確な理由のない退去も意外と多く見られます。新しい街で暮らしてみたいという好奇心からの転居が主な動機です。また、同じエリア内で物件を変える「気分転換の住み替え」を選ぶ入居者も一定数存在します。
7位:不要になった
現在の物件が「不要になった」という退去理由には、さまざまな事情が含まれます。たとえば、滞在期間を終えて帰国する外国人、単身赴任の終了、子どもが独立して広い住まいが必要なくなったなどのケースです。
8位:広い物件へ住み替え
「家族が増えた」「在宅勤務が定着した」「子どもが成長した」といったライフスタイルの変化により、より広い住まいを求めて退去するケースも見られます。たとえば、1LDKから2LDKへ、2LDKから3LDKへといったように、生活環境にあわせて間取りを見直す動きです。
9位:利便性などにより他地域へ
買い物や通勤・通学といった日常生活の利便性を求めて、他エリアへ移るのも退去理由の一つです。とくに都市部では、「駅まで徒歩圏内」「近くにスーパーや医療機関がある」といった利便性を重視する傾向が強く、より暮らしやすい環境を求めて住み替えを選ぶ入居者が少なくありません。
10位:安い物件へ住み替え
現在の賃貸物件よりも安い家賃を求めて退去する入居者もいます。その背景には、「収入の減少」「貯蓄を増やしたい」「毎月の支出を抑えたい」といった経済的な理由が。契約更新のタイミングで周辺の賃貸物件と家賃を比較し、よりコストパフォーマンスの高い物件へ移るケースも多く見られます。
賃貸物件が1年以内に退去される理由は?
1年以内の短期退去が続く物件には、管理会社から“見えにくいトラブル”が潜んでいる可能性があります。なかでも、よくある原因として挙げられるのが、以下の3大トラブルです。
- 騒音トラブル
- 近隣トラブル
- 物件・設備トラブル
それぞれの内容と、管理会社として取るべき対策を詳しく見ていきましょう。
退去理由1: 騒音トラブル
トラブルによる退去で目立つ理由のひとつが「騒音」です。たとえば、複数の入居者が短期間に退去するようなケースでは、まず騒音を疑うべきでしょう。騒音トラブルは、対応が遅れると深刻化しやすいため、早めの対応が求められます。
以下は、入居者からの苦情になりやすい「騒音の発生源と種類」です。
騒音の発生源 |
・隣室からの音(テレビ・話し声など) |
騒音の種類 |
・生活音(洗濯機・掃除機など) |
とくに、夜間の騒音は入居者のストレスが大きく、退去につながりやすいため注意が必要です。
【騒音トラブルの対策】
完全な解決が難しい場合でも、「管理会社やオーナーが誠意を持って対応してくれている」と入居者に感じてもらうことが大切です。以下のような対応が効果的です。
遮音性の改善 |
・防音カーテン、防音フローリングなどの導入 |
入居者への配慮 |
・同じ物件内で別の部屋(上下階や角部屋など)の移動を提案 |
騒音ルールの明文化 |
・賃貸借契約書や掲示物にて「騒音に関するルール」を明示 |
退去理由2:近隣トラブル
近隣トラブルは、周囲との人間関係でストレスを感じて退去してしまうケースです。具体的には、以下のようなケースが挙げられます。
- 隣人とのコミュニケーション問題
- ゴミ捨て場のマナー違反
- 共用部分の使用に関する問題
- プライバシー侵害の問題
【近隣トラブルの対策】
近隣トラブルが疑われる場合は、「防犯カメラを設置する」や「巡回の頻度を増やす」などの対策が有効です。
退去理由3: 物件/設備トラブル
賃貸物件の退去理由として見落とされがちですが、物件や設備の不具合が原因となるケースも少なくありません。以下のような問題は、入居者の満足度を大きく下げる要因になります。
老朽化による不具合 |
例) |
水まわりの問題 |
例) |
結露・カビの発生 |
例) |
【物件/設備トラブルの対策】
入居者の不満が「退去という行動」になってしまう前に、管理会社やオーナーが主体的に動くことが重要です。トラブルの種類ごとに、以下のような対策が有効です。
老朽化への対策 |
・細かい設備点検の実施(ドア、窓、給湯器、エアコンなど) |
水まわりのトラブル対策 |
・排水管や排水口の定期清掃を実施 |
結露・カビ対策 |
・断熱や換気の改善(窓の断熱フィルムや換気扇の交換など) |
不動産会社が退去理由を聞く方法は?
不動産会社が退去理由を把握することは、的確な空室対策を講じるうえで欠かせません。しかし実際には、入居者が本音を語るとは限らず、表面的な理由しか教えてもらえないことも少なくありません。 ここでは、本音を引き出すためのポイントを解説します。
退去理由を確認する際は、プライバシーへの配慮を忘れずに
入居者に退去理由を聞く際は、「あくまでも任意であること」をしっかり伝えましょう。無理に聞き出すのではなく、「協力してもらえると嬉しい」という姿勢が大切です。そのうえで、以下の点に注意してください。
- プライバシーに配慮することを最優先:答えづらそうな様子があれば、無理に深掘りしないようにしましょう。
- 情報の収集目的を明示:「今後の空室対策やサービス改善の参考にさせていただくため」と伝えることで、納得感を得やすくなります。
- 個人情報を適切に管理することを約束:アンケート結果を具体的にどのように管理するかを伝えましょう。
適切なヒアリング方法を選択する
退去理由を聞く方法には、「対面」「非対面ツール」「アンケート調査」があります。それぞれの特徴を理解し、使い分けましょう。
退去理由の確認方法.1 対面
退去の申し出があった際に、対面や電話で直接話を聞く方法です。リアルなコミュニケーションには、以下のようなメリットがあります。
- その場で質問を深掘りできるため、退去理由の背景が見えやすい
- 表情や声のトーンから、言葉にしづらい本音を読み取りやすい
- 具体的な改善点を詳しく聞き出しやすい
ただし、「騒音トラブル」や「近隣トラブル」などのデリケートな問題は、対面だと入居者が本音を言いにくいケースも少なくありません。
退去理由の確認方法.2 非対面ツール
メールやSNS、アプリなど、非対面のコミュニケーションツールを活用する方法もあります。とくに若い世代の入居者は、対面よりもこちらのほうが本音を伝えやすいのではないでしょうか。非対面でのヒアリングには、以下のようなメリットがあります。
- 対面では言いづらいことでも、伝えやすい
- 入居者自身のペースで回答できるため、プレッシャーが少ない
- 記録が残るため、内容を分析・共有しやすい
たとえば、「退去理由について、LINEで簡単に理由を教えていただけると助かります」といった形で、気軽に答えてもらえる雰囲気をつくりましょう。
退去理由の確認方法.3 アンケート調査
退去理由をしっかり把握したい場合は、アンケート形式での聞き取りがおすすめです。入居者が気軽に回答できるようにするには、以下の工夫が有効です。
- 匿名で回答できる形式にすることで、本音を引き出しやすくなる
- チェックシート形式で回答してもらうことで、回答の手間を減らせる
回答のお礼として、粗品(例:500円程度の商品券など )を用意すると回収率が向上しやすいです。
【アンケートの質問例】
- 退去の主な理由を教えていただけますか?
- 物件に住まれていて、ストレスを感じたことはありませんか?
- 物件の管理で改善してほしいと感じたことはありますか?
- 今後、再び当社が管理する物件を利用したいですか?
こうしたアンケート結果を分析・蓄積することで、「物件管理の質」を高めるためのヒントが得られます。
退去理由をしっかり把握し、効果的な空室対策を
入居者の退去には「転勤」や「自宅購入」など避けがたい理由もあります。一方で、管理会社が改善できる“入居者の不満”が隠れているケースも多くあります。このコラムのポイントをまとめると、以下のようになります。
【退去理由ランキングTOP10】
ライフイベント(転勤・結婚・就職など)による退去が大半を占める
【早期退去の3大要因】
1. 騒音トラブル
2. 近隣トラブル
3. 物件・設備トラブル
【対策例】
遮音性の改善、設備の定期点検、防犯カメラの設置などによる安心感の提供
【退去理由の聞き取り手法】
対面・非対面・アンケートを状況に応じて使い分けることがカギ
退去理由をしっかり把握・共有することで、有効な空室対策のヒントが得られます。これを実現するために、ヒアリングとフィードバックの仕組みを整えましょう。
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賃貸物件の退去理由|よくある質問
Q. 退去理由を新しい入居者に伝える義務はありますか?
A.退去理由が通常の生活上の理由(転勤・結婚・実家に戻るなど)であれば、伝える義務はありません 。ただし、「心理的瑕疵(かし)」に該当するケース、たとえば過去に事件や事故、長期的に発見されない孤独死などがあった場合は、告知義務が生じます。