知らないと損する!賃貸物件の修繕周期・費用と資産管理の重要性
日本では、築20年以上の賃貸物件が全体の55%を超える時代に突入。このような状況下で、老朽化した物件の維持管理が賃貸市場の大きな課題になっています。しかし、多くの賃貸物件所有者が修繕計画を立てておらず、結果的に資産価値の低下や大規模修繕費用の負担増加を招いている状況です。今回は、賃貸物件の修繕周期や費用、長期的な資産管理の重要性を解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
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賃貸物件の供給動向
バブル期の1987年には、住宅全体で173万戸、賃貸住宅で89万戸が供給されていました。住宅供給がピークを迎え、物件の新築が活発に行われていた時期です。しかし、直近の2023年では住宅全体が82万戸、賃貸住宅が34万戸と、供給数が大幅に減少。背景には少子高齢化や人口減少が影響しており、新築物件の供給よりも既存物件の維持管理が重要視される時代に変化しています。
また、築年数の古い物件が増加している現状は、賃貸市場にとって新たな課題です。特に築20年以上の物件が増加するなかでは、適切な維持管理と競争力の確保が課題解決の鍵になるでしょう。
長期修繕計画の現状と課題
賃貸物件の維持管理では、長期修繕計画における未作成率の高さが課題です。過去のアンケート調査によると、約80%の賃貸物件で長期修繕計画が未作成でした。
一方、分譲マンションでは管理組合や建物管理会社が中心となり、約80%の物件で長期修繕計画が作成されています。差が生まれている要因は、賃貸物件の主な管理責任がワンオーナーに集中しているためです。
長期修繕計画が未作成の場合、修繕時期や費用が事前に把握できず、必要な修繕を適切なタイミングで行えないリスクがあります。また、突然の大規模修繕工事が必要になった際に資金が不足し、結果的に物件の劣化が進む可能性があるでしょう。
計画修繕工事の具体例と周期
賃貸物件の修繕は、大きく「建築項目」と「設備項目」に分けられます。まずは、建築項目の具体例と周期から見てみましょう。
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続いて設備項目の具体例と周期です。
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修繕工事にかかる費用
修繕工事には高額な費用がかかります。たとえば、延べ床面積250㎡の物件を修繕する場合、平米単価を2万円としたときの費用は約500万円です。国土交通省が令和3年度に実施した「マンション大規模修繕工事に関する実態調査」によれば、平米単価が1万〜2万円程度であると記載されています。近年の物価上昇や人件費増加を考慮して、上限に近い金額で計算するほうが現実的でしょう。
また、エレベーターや給水ポンプ、インターホンの更新もそれぞれ数十万〜数百万円の費用がかかります。これらの費用を計画的に確保するためには、長期的な積み立てが不可欠です。たとえば、10年後に500万円の修繕費用が必要な場合、月々約4万1000円を積み立てることで備えることができます。計画的な資金確保ができていれば、突発的な修繕費用の支出を抑えることが可能です。
参考元:国土交通省|令和3年度マンション大規模修繕工事 に関する実態調査
修繕周期と費用見通しの必要性
築年数が増えるにつれて、賃貸物件の修繕が避けられない課題となります。不動産会社や管理会社は、物件所有者に対して修繕周期や必要な費用についての情報提供を行い、修繕計画の作成を促すべきでしょう。また、賃貸住宅修繕共済や修繕専門資格「賃貸住宅メンテナンス主任者」の普及を促進し、賃貸市場全体の維持管理能力を向上させることも重要です。
さらに、物件購入前の段階で修繕費用の見通しを立てることが、長期的な資産管理を行うために必要だといえます。修繕周期と費用を事前に把握することで、物件の収益性や維持管理の綿密な計画が立てられるでしょう。
修繕周期と費用を把握して適切な資産管理をしよう!
日本における賃貸市場の課題は、築20年以上の物件が全体の55%を超え、早急な老朽化対応が求められていることです。しかし、約80%の物件で長期修繕計画が未作成である現状が、資産価値の低下や修繕費用負担の原因になっています。
原因を解決するには、不動産会社が所有者や管理者に対して、建築や設備項目ごとの修繕周期や費用への理解を促すことが重要です。また、賃貸住宅修繕共済や修繕専門資格を活用して、賃貸市場全体の維持管理能力を向上させる必要があります。
このような対策を行うことで、物件の収益性を確保し、安定的な運営に期待できるでしょう。