
不動産広告の表示規約と禁止用語一覧をわかりやすく解説【保存版】
近年、不動産広告の広告表現における法改正が続いています。目的は、消費者トラブルの未然防止と公正な取引の確保です。また、インターネット広告の普及による、不適切な表現の影響を抑える効果もあります。
こうした背景のもと、不動産業界では広告表現に対するコンプライアンス意識が求められており、「表示規約」や「禁止用語一覧」の正しい理解が不可欠です。理解しないまま不動産広告を作成していると、行政処分を受けたり、信頼を失ったりする重大なリスクが発生するでしょう。
この記事を読むことで、不動産広告におけるリスク回避の実践力が高まり、安心・信頼される広告作成につながるはずです。ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.不動産広告の表示規約|基本ルールを理解しよう
- 1.1.表示規約が定められた背景と目的
- 1.2.対象となる広告媒体と業種
- 1.3.違反時に発生するペナルティと影響
- 2.不動産広告の禁止用語一覧と理由
- 2.1.「完全」「絶対」などの断定的表現
- 2.2.「日本一」「業界一」などの比較表現
- 2.3.「特選」「厳選」などの選別表現
- 2.4.「最高」「特級」などの最上級表現
- 2.5.「格安」「激安」などの価格表現
- 2.6.「完売」「大人気」などの人気表現
- 3.不動産広告の作成ポイント
- 3.1.データに基づいた事実や根拠の明示
- 3.2.社内でのダブルチェック体制の構築
- 3.3.定期的な広告内容の見直し
- 3.4.外部専門家への相談の活用
- 4.不動産広告の表示規約と禁止用語を理解して違反を避けよう
- 5.不動産広告の表示規約に関するよくある質問
- 5.1.「新築」と表示できるのはどんな物件?
- 5.2.「未入居」でも中古物件になるのはなぜ?
- 5.3.「LDK」と「DK」の使い分けにルールはある?
- 5.4. 「駅徒歩○分」の表記にはどんなルールがある?
- 5.5.「ペット可」はどこまで細かく書くべき?
- 5.6.表現がグレーな場合はどう判断する?
不動産広告の表示規約|基本ルールを理解しよう
不動産広告には、消費者を保護し、健全な取引を促進するための「表示規約」が定められています。さまざまな媒体(インターネット・チラシ・テレビCMなど)に掲載される情報は、表示規約に準拠していなければなりません。ここでは、表示規約の基本的なルールや、違反した場合のリスクなどを詳しく解説します。
表示規約が定められた背景と目的
不動産広告による表示規約の適正化が求められたのは、購入をめぐる消費者トラブルの増加が背景にあります。昭和42年以前は、宅地建物取引業法(以降、宅建業法)による広告規制がありませんでした。このような背景により、昭和42年に宅建業法に表示規約が新設され、以降は状況に応じて内容が何度も改正されています。
近年では、令和4年(2022年)に、徒歩所要時間の表示や二重価格表示をするための要件などが改正されました。不動産業界では、消費者トラブルを防止する目的で、宅建業法や公正競争規約をもとに広告の適正化を目指しています。
対象となる広告媒体と業種
不動産広告の表示規約は、新聞折込チラシやテレビCM、インターネット広告(自社HPやポータルサイト含む)など、多種多様な媒体が対象です。また、売買や賃貸の仲介会社をはじめ、建売住宅のハウスメーカーや土地の分譲会社など、不動産に関係する幅広い業種がこの規約の適用を受けます。
とくに、インターネット広告は短時間で情報が拡散されるため、不適切な表現があった場合は多くの消費者に影響を及ぼしかねません。表示規約の対象かどうかにかかわらず、不動産会社は正確かつ適正な広告作成を行いましょう。
違反時に発生するペナルティと影響
不動産広告において違反すると、以下のような処分を受ける場合があります。
- 景品表示法違反(消費者庁):指導・措置命令
- 宅建業法違反(国土交通省):指示・業務停止・免許取消
- 表示規約違反(不動産公正取引協議会):注意・警告・厳重警告・違約金課徴(違約金は初回50万円以下。2回目以降、最大500万円。会社名等を公表できる規定あり。)
これらの処分を受けてしまうと、不動産会社としての社会的信用を大きく損ない、顧客離れや売上の減少といったリスクが発生しかねません。不動産広告の作成時には、広告に関する規約の内容を十分に理解し、法令順守を徹底することが重要です。
不動産広告の禁止用語一覧と理由
不動産広告では、消費者に誤認を与える恐れのある表現が禁止されており、表示規約に基づき使用できない用語が定められています。これらの広告規制は、誇大広告による消費者トラブルを防ぎ、公正な取引環境を維持するために設けられました。不動産広告の作成時は、禁止用語を正しく理解し、使用を避けることが重要です。
「完全」「絶対」などの断定的表現
根拠のない「完全」「完ぺき」「絶対」「万全」といった用語の使用は、避けるべき断定的表現に該当します。根拠のない断定的表現は、物件やサービスに一切の欠点がないことを意味し、消費者に誤解を与える可能性が高いでしょう。
禁止されている断定的表現の例は、以下のとおりです。
- 完全防音で外の音が一切気になりません!
絶対に後悔しない理想の住まいです!
これらの表現は、実際の物件に欠陥がないと誤認させる可能性があり、公正な取引を阻害しかねません。合理的な根拠がない限り、これらの断定的表現は避けるべきです。
「日本一」「業界一」などの比較表現
根拠のない「日本一」「業界一」「当社だけ」「他に類を見ない」といった用語の使用は、避けるべき比較表現に該当します。比較表現は、他社や他物件と比較して優位性を示す用語であり、根拠がなければ消費者への誤解を与えかねません。
禁止されている比較表現の例は、以下のとおりです。
- 日本一安い新築戸建てをご提供!
業界No.1の実績あり!
これらの比較表現は、実際の優位性を裏付けるデータや証拠がない限り、不動産広告での使用が禁止されています。不動産広告には、正確で公正な情報提供が求められるため、これらの表現の使用には注意が必要です。
「特選」「厳選」などの選別表現
明確な選定基準がない「特選」「厳選」といった用語の使用は、避けるべき選別表現に該当します。選別表現は、物件が特別な基準で選ばれたことを意味するものの、明確な選定基準や根拠がない場合、消費者が誤認する可能性を高めるでしょう。
禁止されている選別表現の例は、以下のとおりです。
- 当社が自信を持つ特選物件だけを紹介!
プロが厳選した、今だけのオススメ物件!
これらの選別表現は、実際に特定の基準で選ばれた事実がなければ使用できません。消費者が正確な情報をもとに判断できるよう、公正な表現を意識しましょう。
「最高」「特級」などの最上級表現
根拠が不明確な「最高」「特級」「トップクラス」といった用語の使用は、避けるべき最上級表現に該当します。最上級表現は、物件やサービスが他社や他物件よりも圧倒的に優れていることを示しており、根拠が不明確であれば誤解を招く可能性が高いでしょう。
禁止されている最上級表現の例は、以下のとおりです。
- この価格帯では最高級の設備仕様!
- このエリアで最高の立地を誇る物件!
これらの最上級表現は、根拠と事実に基づく具体的な資料があって、ようやく使用できる用語となります。気づかずに最上級表現を使用しないよう、必ず事前にチェックしましょう。
「格安」「激安」などの価格表現
「格安」「激安」「大幅値引き」といった用語の使用は、避けるべき価格表現に該当します。価格に関する表現は、消費者に過度な割安感を与える恐れがあり、消費者が誤解してしまうでしょう。
禁止されている価格表現の例は、以下のとおりです。
- 他では手に入らない格安物件、今だけ限定公開!
この立地でこの価格!?激安物件紹介
これらの価格表現は、透明かつ正確でなければならず、割引額や基準となる価格の根拠を明示する必要があります。不動産取引では、実際の販売価格や条件と広告の整合性が取れていなければいけません。
「完売」「大人気」などの人気表現
「完売」「大人気」「予約殺到」といった用語の使用は、避けるべき人気表現に該当します。人気表現は、販売状況や需要の高さを強調する一方で、実態と異なる場合は虚偽表示にあたるでしょう。消費者が誤解しやすくなるため、注意しなければいけません。
禁止されている人気表現の例は、以下のとおりです。
- 販売開始1週間で大人気!残りわずか!
- すでに多数成約済み!完売間近の注目物件!
これらの人気表現は、実際に完売していなかったり、予約がない状況だったりする状況での使用は禁止されています。消費者に正しい判断を促すため、事実に基づいた使用をしなければいけません。
不動産広告の作成ポイント
不動産広告は、消費者に正確な情報を提供し、誤解を招かないようにすることが求められます。ここでは、不動産広告を作成する際のポイントについて、詳しく解説します。
データに基づいた事実や根拠の明示
不動産広告で特定の表現・用語を使用する際は、データに基づいた事実や根拠の明示が不可欠です。たとえば「業界No.1」「駅から徒歩5分」といった用語を使う場合、具体的なデータや実測値といった根拠を明示しなければなりません。
データや根拠のない表現・用語は消費者を誤認させる恐れがあり、違反に該当する可能性があります。具体的なデータや根拠を示すことで、不動産広告の透明性が高まり、リスク回避だけではなく顧客の信頼も得やすくなるでしょう。
社内でのダブルチェック体制の構築
広告の誤表示を防ぐためには、社内におけるダブルチェック体制の構築が効果的です。広告作成者だけでなく、別の担当者が内容を確認することで、誤りや不適切な表現を早期に発見できます。
また、チェックリストを活用することで、確認項目を明確にしながら効率的なチェックが可能です。社内のダブルチェック体制を整えることで、広告の品質を向上させられるでしょう。
定期的な広告内容の見直し
不動産広告の内容は、定期的に見直すことが重要です。市場の変化や法令の改正に対応するため、最新の情報を反映させる必要があります。
また、過去の広告内容を振り返り、改善点を洗い出すことで、今後の広告作成に活せるでしょう。定期的な見直しを行うことで、常に適切な広告を提供し、消費者の信頼を維持できます。
外部専門家への相談の活用
不動産広告を作成するなかで疑問や問題が発生した場合は、外部の専門家に相談してみましょう。不動産公正取引協議会や法律の専門家に意見を求めることで、法令遵守を徹底し、スムーズかつ適切な広告作成が行えます。
また、第三者からのアドバイスは、社内では気づきにくい問題の発見にもつながるでしょう。外部専門家の活用により、広告の品質と信頼性を高められる可能性があります。
不動産広告の表示規約と禁止用語を理解して違反を避けよう
不動産広告には、消費者保護と公正な取引を目的とした「表示規約」が定められています。表示規約はインターネットやチラシ、テレビCMなどの媒体が対象であり、誇大表現や根拠のない用語を厳しく規制。不動産広告に不適切な表現や用語を使えば、景品表示法や宅建業法などに違反し、重いペナルティを受ける可能性もあります。
不動産広告の作成時は、事実に基づいた正確な情報やデータを用意し、根拠ある表現を徹底しましょう。また、社内でのダブルチェック体制や定期的な見直し、専門家への相談も不可欠です。法令順守を心がけて、リスクを避けながら不動産広告の作成を行いましょう。
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不動産広告の表示規約に関するよくある質問
「新築」と表示できるのはどんな物件?
「新築」と表示できるのは、建築後1年未満かつ一度も居住の用に供されたことがない物件に限られます。登記が完了していても、実際に居住していなければ「新築」と表示することが可能です。ただし、建築後1年以上経過している場合は、未入居であっても「新築」とは表示できません。
「未入居」でも中古物件になるのはなぜ?
建物が完成してから1年以上経過している場合、居住した事実がなくても「新築」とは表示できないためです。そのため、未入居であっても「中古」として扱われます。「未入居住宅」や「築浅物件」などの表現で、物件の状態を正確に伝えることが重要です。
「LDK」と「DK」の使い分けにルールはある?
LDK(リビング・ダイニング・キッチン)とDK(ダイニング・キッチン)は、機能性や広さなどで使い分けられています。LDKは居間・台所・食堂の機能を1つの部屋にまとめた空間、DKは、台所と食堂の機能を1つの部屋に併せ持つ空間です。居室数に応じた最低限の広さの目安は、居室が1部屋の場合はDK4.5畳以上、LDK8畳以上。居室が2部屋以上の場合はDKが6畳以上、LDKが10畳以上とされています。
「駅徒歩○分」の表記にはどんなルールがある?
「駅徒歩○分」の表示は、道路距離80メートルを1分として換算するルールがあります。この基準に基づいて表示し、消費者に誤解を与えないよう努めるべきです。ただし、信号待ちや階段などは考慮していないため、実際の歩行時間とは違う場合があることを覚えておきましょう。
「ペット可」はどこまで細かく書くべき?
「ペット可」と表示する場合、具体的な条件や制限などを明記することが望ましいでしょう。たとえば、「小型犬1匹まで可」「猫は不可」といった飼育可能なペットの種類や数、サイズなどです。詳細な条件を記載することで、トラブルの防止につながります。
表現がグレーな場合はどう判断する?
表現が曖昧で判断しにくい場合は、不動産公正取引協議会や法律の専門家に相談しましょう。また、表示規約を確認したうえで判断を行えば、違反を未然に防げる可能性があります。不明点がある場合は、協議会や専門家への確認を行い、適切な広告表示を心がけましょう。