
収益物件はアパートが狙い目?エリア別の傾向と今後の戦い方を解説
収益物件としてアパートを検討している方にとって、全国の取引件数や買主の傾向は気になる情報ではないでしょうか。
最近は、不動産投資を取り巻く環境が年々変化しており、以下の動きを捉えることが重要です。
どのようなエリアでどれくらいのアパートが売買されているのか
誰が購入しているのか
今回は、全国の取引データをもとに、収益物件アパートの全体的な傾向をわかりやすく解説します。今後のエリア戦略や物件選びのヒントにもなる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
収益物件アパートの動きがわかる!全国の取引状況をチェック
収益物件の市場は、ここ数年で大きく変わってきました。
とくに2024年は、取引件数が過去最高を記録し、買主の層にもはっきりとした特徴が見られるようになっています。
ここでは、全国的な動きと買主の傾向を、数字を交えてわかりやすく紹介します。
全国の取引件数は過去最高の37,839件に!背景と伸び方とは?
2024年の一棟アパート・マンションの取引件数は37,839件と、これまでで最も多い数字となりました。月平均で換算すると、約3,153件の取引がある計算になります。
過去の推移を見てみると、2018年・2019年はスルガショック、2020年はコロナショックの影響を受け、一時的に取引件数が減りました。しかし、その後は徐々に回復し、現在は右肩上がりの傾向が続いています。
年度 | 主な動き | 取引件数の傾向 |
---|---|---|
2010〜2017年 | 不動産投資ブーム | 年々増加 |
2018〜2019年 | スルガショック | 一時的に減少 |
2020年 | コロナショック | さらに減少 |
2021年〜現在 | 回復基調 | 過去最高を連続更新中 |
取引件数増加の背景には、営業活動の回復や投資先の分散化が影響しています。現金を銀行に眠らせるよりも、不動産を安定的な資産として保有したいという動きが、個人・法人問わず広がってきているようです。
買主の約7割が法人に変化
現在、全国で収益物件アパートを購入している買主の72.6%が法人です。この傾向は年々強まっており、2010年頃と比べると、買主の顔ぶれが大きく変わっています。法人といっても、その中身はさまざまです。
たとえば、以下のようなタイプの法人が増えています。
資産管理法人
→ 会社員が自ら法人を設立し、アパートを保有して収益化するケース。事業法人(本業は異業種)
→ 飲食店や製造業など、別の事業を営む企業が第二の柱として不動産を取得。不動産会社・宅建業者
→ 自社で仕入れて長期保有し、賃貸収入を得る投資目的が増加。
とくに最近は、「本業+不動産」の経営戦略が注目されており、事業法人による収益物件アパートの購入が目立っています。これは、景気の変動リスクを分散させたい企業にとって、アパート経営が“安定的な収益源”と見なされているからです。
収益物件アパートの取引傾向をエリア別に読み解こう
全国の取引件数が増えているとはいえ、エリアごとに動きには違いがあります。
とくに注目したいのが、件数の規模や買主の傾向が明確に異なることです。
ここでは、代表的な8つのエリアを取り上げ、それぞれの特徴を見ていきます。
関東・近畿エリアが強い!件数も法人比率もトップクラス
全国で最も多くの収益物件アパートが取引されているのは、関東エリアと近畿エリアです。2024年のデータでは、以下のようになっています。
エリア | 取引件数 | 法人比率 |
---|---|---|
関東 | 14,508件 | 70.3% |
近畿 | 5,828件 | 84.2% |
関東は全体の38.3%を占める圧倒的な市場規模を誇り、首都圏を中心とした投資ニーズが集まっています。
一方、近畿は取引件数こそ関東より少ないものの、法人比率が全国で最も高い84.2%となっており、事業法人や宅建業者による買いが活発です。関西圏の信用金庫や地域金融機関が事業用融資に積極的な点も影響しています。
とくに大阪・兵庫・京都などは、利回り・交通利便性・人口密度のバランスが良く、法人が“買いやすい”エリアです。
北海道・東北・中部・九州は堅調に増加中
東京・大阪ほどの規模ではないものの、地域ごとの安定した成長が見られるのが以下4つのエリアです。
エリア | 取引件数 | 法人比率 | 全国比率 |
---|---|---|---|
北海道 | 3,225件 | 68.4% | 8.5% |
東北 | 2,595件 | 64.5% | 6.9% |
中部 | 4,163件 | 73.2% | 11.0% |
九州 | 4,460件 | 71.3% | 11.8% |
4エリアに共通するのは、「地元需要に根ざした投資スタイル」が中心である点です。たとえば、北海道では観光地ニーズや札幌中心部への投資が根強く、中部・九州は地元企業の事業分散先としての需要が増えています。
今後も、東京や大阪から少し距離を置いた、“程よく安定した地方中核都市”のアパートに注目が集まりそうです。
北陸・四国はどう戦う?件数が少ない市場で選ばれるためには
取引件数は少ないものの、今後の戦い方次第で確かな存在感を出せるエリアが北陸と四国です。
エリア | 取引件数 | 法人比率 | 全国比率 |
---|---|---|---|
北陸 | 572件 | 71.9% | 1.5% |
四国 | 782件 | 71.6% | 2.1% |
どちらの地域も件数こそ小さいですが、法人比率が7割超と、投資のニーズはしっかりあります。上記エリアで成果を出すには、次のような視点が必要です。
狭いエリア内での“専門性”を持つ
売り物件の希少性を活かして差別化する
物件と管理の一体提供で収益力を見せる
エリアが小さい分、「あの会社はこの地域で強い」と認識されやすいメリットもあります。つまり、件数の少なさはデメリットではなく、「狭く深く」攻められる土壌といえるでしょう。
収益物件アパートの市況|価格・利回り・賃料・融資の動き
エリアごとの取引件数を確認したあとは、数字のトレンドにも目を向けてみましょう。
物件価格や利回り、賃料相場、さらには融資の状況などは、収益物件アパートの購入判断に直結します。
ここでは、最新データをもとに市況の動きを解説します。
一棟アパートの価格はやや上昇傾向|利回りとのバランスに注目
健美家×LIFULL マーケットレポートによると、2024年6月時点での全国平均価格は約7,857万円、表面利回りは8.13%となっており、前年よりもやや上昇しています。
年度 | 平均価格 | 表面利回り |
---|---|---|
2023年6月 | 約7,847万円 | 約8.06% |
2024年6月 | 約7,857万円 | 約8.13% |
新築や築浅アパートでは、価格が高いわりに利回りが抑えられる傾向があるため、利回りだけでなく収益のバランスを丁寧に確認することが大切です。
エリアごとの家賃動向と空室率から見える“今”
収益を左右するもう一つの大きな要素が「家賃」と「空室率」です。
アットホームラボが発表した2025年6月のデータによると、多くの都市で前年同月比で家賃が上昇しており、一部エリアでは指数が過去最高を更新しました。ファミリー物件よりも、1Kや1LDKなどの単身向けタイプで高稼働を維持しているエリアが多く、家賃相場は底堅い動きとなっています。
また、LIFULL HOME'Sマーケットレポートでは、築年数の少ないアパートほど反響が集まりやすい傾向が見られました。築浅物件だけでなく、築10〜15年程度で適切に管理された物件も、家賃と設備のバランスが良く評価されていることがわかります。
全国賃貸住宅実態調査によると、空室率には、首都圏・関西圏などでは高稼働を維持する一方で、地方エリアではエリア間格差が拡大しています。地域や物件の特性によっては、空室リスクが顕在化しやすいため、過去の稼働率や管理履歴の確認が重要です。
融資環境は厳しめ?金利と金融機関の姿勢をチェック
日本銀行が発表する貸出約定平均金利によると、2024年に入ってから企業向け・個人向けの貸出金利は徐々に上昇基調にあります。とくに不動産投資ローンを含む事業性融資では、金利の引き上げが一部で進んでおり、借入条件によってキャッシュフローに差が出やすい状況です。
金利上昇は、ローン利用を前提とする投資家にとってはキャッシュフローを圧迫する要因です。また、金融機関の融資スタンスも慎重になっており、とくに築古物件や賃貸需要が低い地域の案件は審査が厳しくなる傾向にあります。
一方で、高稼働の築浅物件や好立地アパートであれば、金融機関によっては金利を優遇してくれるケースもあります。つまり、「どこで・どのような物件を・どのような形で買うか」によって、融資条件に大きな差が出る可能性が高いでしょう。
収益物件アパートで成果を出す“戦い方”
市場の動きや市況を把握するだけでは、安定した成果につながりません。ここでは、目標件数の考え方と、物件選定の基本的なチェックポイントを紹介します。
シェア比率で逆算!26%・15%・11%・7%…目標件数の考え方
まず知っておきたいのが、「取引件数から目標件数を逆算する」という考え方です。
とくに、自社の存在感を“エンドユーザーから認識されるレベル”に引き上げたいときには、次のような「シェア比率」を意識するのが効果的です。
シェア目安 | 目標とする影響度 |
---|---|
26% | 圧倒的な存在感(地域1番手) |
15% | 目立つ実績(選ばれやすい) |
11% | 安定した認知(業者間で名前が挙がる) |
7% | 一般ユーザーからの認知が始まるライン |
たとえば、北海道全体では月間269件の収益物件アパートが取引されています。このなかで、月に20件の仲介を行っていれば、シェアは約7%です。7%と聞くと少なく感じますが、これは「ユーザーに知られている会社」として市場で一定の信頼を得ている状態を示しています。
もちろん26%を目指すのは簡単ではありません。まず「7%ラインを超えるかどうか」を1つの目標に設定することで、営業戦略や出稿件数の見直しに役立てられます。
“選ばれる物件”のポイントは?立地・修繕・収支の見極め方
目標件数を決めたあとは、「どのような物件を扱うか」も大切です。
とくに最近は買主の目も厳しくなっており、「条件のいい物件を紹介してくれる会社」かどうかが問われています。
物件選定で押さえておきたい基本的なポイントを、以下にまとめます。
立地 | ・駅距離は徒歩10分以内が理想(とくに都市部) ・周辺にコンビニ・スーパー・学校などがあるか ・地域の賃貸需要とマッチしているか |
建物・修繕履歴 | ・築年数は「築15年以内」が人気ゾーン |
収支・キャッシュフロー | ・表面利回りだけでなく「実質利回り」で比較 |
とくに注意したいのが、収支だけ見て即決する買主が減っている点です。
立地・修繕・入居率・金融条件までを含めて、“トータルで安心できる物件”が選ばれやすくなっています。
そのため、不動産会社としては「売れる物件」よりも「安心して買ってもらえる物件」を選定・提案する姿勢が求められます。
収益物件アパートは数字で読み解こう
今回は、収益物件アパートの全国的な取引状況やエリアごとの傾向、市況の動き、そして目標件数の考え方や物件選定のポイントについて解説しました。
アパート投資をめぐる環境は、価格・利回り・融資・家賃など、さまざまな数字で少しずつ変化しています。とくに、エリア別の動きや法人買主の増加は、今後の戦い方に大きく関わってきます。
物件選びや営業戦略を考えるときこそ、感覚だけでなく数字で市場を読み解くことが大切です。
さらに詳しい内容を知りたい方は、あわせて動画解説もご覧ください。
エリア別の件数データやシェアの考え方も、実例を交えてわかりやすく紹介していますので、ぜひ参考にしてください。