
BMとは?PM、AM、FMなど不動産業界の重要職種の役割とスキル
本コラムでは、不動産業界で重要な職種である「PMやBMとは何か?」に着目し、それぞれに求められる役割とスキルをわかりやすく解説します。
「PMやBMとは何か?両者の違いは何か?」を正しく理解し、組織にとって適した人材像を把握することは、管理サービスの質の向上に役立ちます。
不動産業界で長年経験を積まれてきた方はもちろん、これから不動産管理の現場に携わる方にとっても、実践に役立つヒントが詰まった内容です。
賃貸管理の知識の強化に役立つ内容です。ぜひ、最後までお読みください。
目次[非表示]
- 1.BMとは?不動産会社で求められる役割とスキル
- 1.1.BMとは、建物の維持・管理・保全を総合的に行う専門職
- 1.2.BMの主な業務は、設備管理、清掃、保安警備など
- 1.3.BMに求められるスキルとは?
- 1.3.1.幅広い技術の専門知識
- 1.3.2.コミュニケーション力
- 1.3.3.観察力と問題解決能力
- 1.3.4.デジタルリテラシー
- 1.3.5.環境配慮の視点
- 2.「BMとは?」分野が違うと意味が変わる
- 2.1.一般ビジネスで使われるBMとは?
- 2.2.ベンチマークで使われるBMとは?
- 3.PMとは?不動産会社で求められる役割とスキル
- 4.PMに求められるスキルとは?経営視点と人間力が問われる
- 4.1.マーケティング能力
- 4.2.コミュニケーション力
- 4.3.収支管理能力
- 5.BM・PMだけではない!不動産の運営を支えるAMやFMとは?
- 6.BM×PMの連携がカギ!情報を共有しやすい社内体制の構築を
- 7.BMに関するよくある質問
BMとは?不動産会社で求められる役割とスキル
BMとは、建物の機能性や安全性を維持するための「ハード面の管理」を専門とする職種です。設備の点検や清掃、防災対策など、建物自体の品質を守ることが主な役割になります。
ここでは、BMが担う具体的な業務や、その重要性について整理していきましょう。
BMとは、建物の維持・管理・保全を総合的に行う専門職
BMとは「ビルディングマネジメント(Building Management) 」の略称で、建物の維持や管理を総合的に行う職種です。日常的な点検や清掃業務はもちろん、長期修繕の計画立案や実行も担当します。いわば、建物の“健康管理”を担う存在と言えるでしょう。
BMは、以下の3つの視点からオーナーに貢献します。
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建物の状態が良好に保たれていれば、設備トラブルの発生を未然に防げ、結果として空室リスクの低下にもつながります。
BMは一見すると目立たない存在ですが、不動産の価値を支えるうえで欠かせない職種と言えるでしょう。
BMの主な業務は、設備管理、清掃、保安警備など
次に、BMとは、具体的に「どのような業務を担うのか」を確認していきましょう。あらためて整理してみると、その業務範囲は多岐にわたります。一言で「建物の管理」と言っても、実際には細かな対応や判断が求められる場面が少なくありません。
項目 |
業務内容 |
設備関連業務 |
・附属設備(電気、空調、給排水、ボイラーなど)の保守点検 |
清掃関連業務 |
・日常清掃(共用部分の清掃、ゴミの管理など) |
保安警備業務 |
・常駐警備や巡回警備 |
防災業務 |
・消防設備や防災設備の管理 |
法定点検 |
・エレベーターやエスカレーターの保守点検 |
修繕業務 |
・長期修繕計画の立案 |
BMが提供する管理サービスが不足してしまうと、建物の劣化が進み、結果的に資産価値の低下を招く恐れがあります。
そのため、BM業務を担うなかで「このままでは提供している管理内容が不十分かもしれない」と感じた場合には、オーナーに対してその必要性を丁寧に説明し、改善策を提案しましょう。
このような現場での気づきや提案が、建物の価値の維持や向上に大きく貢献します。
BMに求められるスキルとは?
BMの業務は、建物や設備の維持管理にとどまりません。テナントや入居者、施設利用者との良好な関係づくりにも関わる、幅広い役割を担っています。そのため、BMにはメンテナンス業務を超えた多様なスキルが求められます。
なかでも、とくに重要と考えられるのが、以下の5つのスキルです。
幅広い技術の専門知識
BMに求められる第一のスキルは、技術的な専門知識です。建物や設備を安全かつ快適な状態で維持するためには、各種インフラに関する理解が欠かせません。たとえば、電気設備・空調・給排水・消防設備などに関わる知識です。
また、建築基準法や消防法などの関連法令の知識も重要な要素。業務に必要な法律は定期的に改正されるため、常に最新の情報を把握し、知識をアップデートしていく姿勢が求められます。
コミュニケーション力
建物の管理業務では、テナントや入居者、オーナーなど、さまざまな関係者とのやり取りが日常的に発生します。それぞれの立場や要望を的確にくみ取り、安定した信頼関係を築いていくためには、高いコミュニケーション力が欠かせません。
丁寧な説明や迅速な対応が、トラブルの未然防止や長期的な関係構築につながっていきます。
観察力と問題解決能力
BMにとって欠かせないのが、建物や設備の不具合にすばやく気づく「鋭い観察力」。日常の点検や巡回のなかで小さな異変を見逃さないことが、トラブルの早期発見につながります。
さらに、予期せぬ事態が発生した際には、冷静な判断と的確な対応が求められます。問題を正確に捉え、迅速に解決へと導くスキルは、BMとしての大きな強みとなるでしょう。
デジタルリテラシー
近年では、IoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を活用したスマートビル管理が加速しています。こうした流れのなか、BMにもデジタル機器や各種ソフトウェアへの理解が求められるようになってきました。
単に操作に慣れるだけでなく、「現場での課題解決にどう活かすか」の実践的な活用力が、今後ますます重要になっていくでしょう。
環境配慮の視点
近年、環境意識の高まりとともに、建物管理にも環境負荷の少ない手法が求められるようになってきました。このような流れのなかで、BMには、省エネ対策やCO2排出削減に向けた取り組みを提案する役割が期待されています。
単に管理を行うだけでなく、オーナーに対して持続可能な運営方法を積極的に提案していく姿勢が、今後より重要になってくるでしょう。
「BMとは?」分野が違うと意味が変わる
「BM」は、不動産業界ではビルマネジメントを指す言葉として広く浸透しています。しかし、分野が違うと、まったく別の意味を表すことも。ここでは、不動産以外の分野の「BM」の使われ方をご紹介します。
一般ビジネスで使われるBMとは?
ビジネスの一般的な文脈でのBMとは、「ビジネスマネジメント(Business Management)」の略です。具体的には、経営管理や組織運営などの意味を示します。
ベンチマークで使われるBMとは?
ベンチマーク(Benchmark)の意味で、BMが使われることもあります。ベンチマークとは、「目標とする指標」の意味です。ただし、ベンチマークは、経営やIT業界などさまざまな分野で使われており、シーンによって意味が変わってきます。
PMとは?不動産会社で求められる役割とスキル
ここまでの内容でBMについては、ご理解いただけたのではないでしょうか。さらに、もう一つの重要職種であるPMの役割と求められるスキルを整理していきましょう。
PMの業務とは、不動産の経営管理を担うプロ
PMとは、「プロパティマネジメント(Property Management)」の略称で、オーナーに代わって不動産の経営管理を担う業務を指します。その主な役割は、不動産の収益を最大化しつつ、資産価値を維持・向上させることにあります。
近年は、少子高齢化や人口減少の影響により、賃貸市場の競争が一段と激しい状況に。こうした背景を踏まえると、PMの重要性はこれまで以上に高まっており、的確な経営戦略と柔軟な対応力が求められる時代になったと言えるでしょう。
PMの主な業務とは、リーシング、契約や賃料の管理など
PMが担う業務は多岐にわたります。物件の収益性と資産価値を両立させるためには、さまざまな視点からの管理と判断が必要です。
主な業務は、以下のような内容が挙げられます。
項目 |
業務内容 |
リーシング業務 |
・入居者やテナントの募集 |
契約管理業務 |
・新規契約の締結 |
賃料管理業務 |
・家賃の請求や回収 |
入居者対応業務 |
・クレーム対応 |
このほかにも、収支管理や市場調査などの業務もPMの重要な役割に含まれます。こうした幅広い業務を担ううえで大切なのは、日常業務から中長期的な戦略までを一貫した方針に沿って進めることです。
PMに求められるスキルとは?経営視点と人間力が問われる
プロパティマネジメント(PM)は、物件の運営や収益管理を担う重要なポジションです。オーナーの代理人として、不動産の資産価値を最大限に引き出す役割を担っています。
そのため、PMには実務能力に加えて、経営的な視点も欠かせません。具体的には、以下のようなスキルや視点が求められます。
マーケティング能力
PMにとって重要なのが、市場の流れをつかみ、施策につなげる力。まず市場動向や周辺エリアの情報を収集・分析し、合わせて、物件の現状と将来性を正確に評価する必要があります。そして、この分析や評価に基づいて、オーナーに対して必要な施策を提案し、実行するのが優秀なPMの条件です。
コミュニケーション力
PMの仕事では、入居者やオーナー、リフォーム会社など、多くの関係者と日常的にやり取りを行います。それぞれの立場や要望をくみ取り、円滑に調整を進めるためには、高いコミュニケーション力が欠かせません。
収支管理能力
PMには、修繕・清掃・設備更新などのさまざまな管理コストを適切にコントロールする力が求められます。無駄な出費を抑えつつ、必要なコストについてはオーナーに適切に提案する、このバランス感覚が必要でしょう。
上記に加えて、最近では、デジタルリテラシーの重要性も増しています。近年、不動産業界でもDX化が進み、AIやIoTの活用が進んでいます。こうした流れに対応するため、PMにはデジタルリテラシーがより求められていくでしょう。
BM・PMだけではない!不動産の運営を支えるAMやFMとは?
不動産管理の現場では、BMやPMに加えて、さまざまな専門職が連携しながら物件の運営を支えています。なかでも注目すべき存在が、AM(アセットマネジメント)とFM(ファシリティマネジメント)です。
それぞれ異なる立場から「不動産価値の最大化」に貢献しており、物件管理の質を左右する重要な役割を担っています。AMとFMがどのような業務を担っているのかを具体的に見ていきましょう。
AMとは?資産価値を最大化する投資活動の司令塔
AM(アセットマネジメント)は、不動産の資産価値を最大化する戦略を立て、実行する役割を担います。収益の向上とリスクの抑制を両立させ、投資効率を上げることが主なミッションです。
【主な業務内容】
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AMは、PMやBMに対して方向性を示す“上流工程”の役割を担っており、市場分析や財務などの専門知識が求められます。
FMとは?経営戦略と連動する運営管理者
FM(ファシリティマネジメント)は、経営戦略と連動させながら、物件を最適に運用する役割を担います。単なる維持管理にとどまらず、稼働率や効率性の向上、コスト削減を通じて経営に貢献する“戦略的な管理運営”が求められます。
【主な業務内容】
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「BMとFMの業務は似ているのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、両者の視点は異なります。BMが管理の実務を主体としているのに対し、FMは投資効率の視点で不動産を管理します。
BM×PMの連携がカギ!情報を共有しやすい社内体制の構築を
不動産管理では、BM(ビルディングマネジメント)とPM(プロパティマネジメント)の連携が、入居者(テナント)満足度の向上と投資効率の最大化を実現するカギとなります。
BMとPMの業務を別のチームが行う場合は、情報の分断を防ぐために、チャットやワークスペースなどのツールを活用し、情報共有をスムーズに行える体制を整えることが重要です。
一方、少人数体制で同じ担当者がBMとPMを兼務している場合は、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの導入による業務効率化が効果的。これにより、業務の負担を抑えつつ、質の高い管理サービスを提供できるようになります。
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BMに関するよくある質問
BMとPMの役割の違いは何ですか?
BM(ビルディングマネジメント)とは、不動産の管理をハード面から支えます。これに対して、PM(プロパティマネジメント)とは、不動産の管理をソフト面から支えます。BMの主な業務は、設備の保守点検や管理、共有部の清掃、防災業務など。PMの主な業務は、入居者やテナントの募集、各種契約手続き、入居者対応など。BMとPMの両方が機能して、質の高い管理サービスが提供できます。
建築図面で使われるBMとは、どのような意味ですか?
BMは、不動産業界以外のさまざまな分野で使われています。たとえば、建築図面のBMは、「ベンチマーク」の意味です。ここで言うベンチマークとは、現状の敷地で基準点となる高さのこと。基準よりも高い場合はBM+、低い場合はBM-のように表記されます。