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プロパンガス法改正|不動産業界が知るべき3つのポイントを解説!

2024年4月に、プロパンガスに関する法律が大きく改正されました。とくに賃貸住宅に関わるオーナーや管理会社、そして入居者にとっても影響の大きい内容です。これまで当たり前だった「設備の無償提供」が見直され、契約の透明化や料金の是正が進んでいます。  
  
プロパンガス法改正の背景には、入居者のガス代が高くなりがちな構造や、選べない契約形態に対する問題がありました。本記事では、法改正によって何がどう変わったのかをわかりやすく解説します。

プロパンガス法改正内容を正しく理解しておくことで、今後の賃貸経営や物件選びのヒントにもつながります。それでは、詳しく見ていきましょう。

目次[非表示]

  1. 1.プロパンガス法改正とは?背景と目的を解説
    1. 1.1.プロパンガス法の正式名称と改正された日付は?
    2. 1.2.プロパンガス法が改正された背景・課題とは?
  2. 2.プロパンガス法改正で変わった3つのポイント
    1. 2.1.過大な営業行為の禁止
    2. 2.2.三部料金制が義務化へ(2025年4月〜)
    3. 2.3.ガス会社・料金の事前提示が必要に
  3. 3.プロパンガス法改正|賃貸オーナー・不動産会社への影響
    1. 3.1.設備費用は自己負担になる
    2. 3.2.都市ガスへの切替が加速する
    3. 3.3.家賃アップでコストをカバーできる
  4. 4.プロパンガス法改正|入居者にとってのメリット
    1. 4.1.高すぎるガス代が是正される見込み
    2. 4.2.自由にガス会社を選べる可能性も
    3. 4.3.情報の見える化で「選びやすさ」が向上
  5. 5.プロパンガス法改正で見える賃貸業界のこれから

プロパンガス法改正とは?背景と目的を解説

プロパンガス法改正とは?背景と目的を解説

プロパンガス法が見直され、不動産業界とガス業界に関わる取引のあり方が変わりました。背景には、入居者に不利な契約慣行が続いていたことがあります。ここでは、法改正の背景と目的を解説します。

プロパンガス法の正式名称と改正された日付は?

プロパンガス法改正の正式名称は「液化石油ガスの保安の確保および取引の適正化に関する法律」です。2024年4月2日に交付され、三部料金制の徹底など一部の内容は、2025年4月2日から施行されました

つまり、段階的に実施される仕組みになっています。法改正により、LPガスの料金や契約内容に対して「わかりやすさ」や「透明性」が求められるようになりました。

プロパンガス法が改正された背景・課題とは?

プロパンガス法改正のきっかけとなったのは、賃貸住宅における「無償設備提供」の仕組みです。たとえば、プロパンガス会社がエアコンやインターネット機器を無料で設置するかわりに、入居者とガス契約を結ぶケースが多く見られました。

不動産会社やオーナーにとってはコストを抑えられるメリットがありますが、その分の設備費用はガス料金に上乗せされていました。結果として、入居者のガス代が割高になってしまう問題が起きていたのです。また、ガス会社を自由に選べない契約条件も、入居者にとって不満の一因となっていました。

このような慣行が「過大な営業行為」と見なされ、今回の法改正で見直しが行われました。

参照:経済産業省ホームページ

プロパンガス法改正で変わった3つのポイント

プロパンガス法改正で変わった3つのポイント

今回のプロパンガス法改正では、業界の不透明な慣習を正すために、重要な変更点が3つ設けられました。入居者が安心してガスを使えるようにするための、大きな一歩といえます。

それぞれのポイントを見ていきましょう。

過大な営業行為の禁止

もっとも注目されたのが、「過大な営業行為の禁止」です。具体的には、プロパンガス会社がエアコンやインターホン、Wi-Fi機器などを無料で提供し、不動産会社やオーナーにガス契約を誘導させる行為が制限されました

これまでは、設備費用をガス料金に上乗せすることで回収する仕組みが一般的でした。しかし、これは実質的に入居者へ負担が転嫁されていたことになります。プロパンガス法改正後は、こうした無償提供による契約誘導が「過大な利益供与」と見なされ、禁止されるようになりました。

三部料金制が義務化へ(2025年4月〜)

LPガスの料金は、以下の3つで構成されています。

区分
内容

基本料金

メーター管理や保安維持にかかる費用

従量料金

実際に使用したガスの量に応じた料金

設備料金

ガス配管や給湯器などの設備に関する費用


これまで設備料金に、ガスと直接関係のない機器の費用が含まれるケースがありました。たとえば、Wi-Fiや宅配ボックスの費用がガス代に含まれている例もあります。今回の法改正では、このような「ガスとは無関係な設備費」の上乗せが禁止され、料金構成の明確化が義務づけられます。

ガス会社・料金の事前提示が必要に

入居者がガス料金について事前に情報を得られるよう、「料金の提示」が努力義務して設けられました。とくに賃貸住宅では、契約時にガス会社が決まっていることが多く、選択の余地がない状態が続いていました。

今回の改正により契約前に以下のような情報を、不動産会社やオーナーが伝えるよう求められています。

  •   どこのガス会社と契約するのか
  •   料金体系はどうなっているのか

これにより、入居者は家賃だけでなく、ガス代も含めて物件を比較しやすくなります。料金への納得感が高まることで、入居後のトラブルや不満の予防にもつながっていくでしょう。



プロパンガス法改正|賃貸オーナー・不動産会社への影響

プロパンガス法改正|賃貸オーナー・不動産会社への影響

プロパンガス法改正は、入居者の保護を目的としたものですが、オーナーや不動産会社にとっても大きな変化をもたらします。

設備導入の負担や経営の方向性について、見直しが必要になるケースも出てくるでしょう。

設備費用は自己負担になる

これまで、プロパンガス会社が無償で提供していた設備の多くは、今後オーナー側が費用を負担する必要があります。アパートやマンションの新築時にはエアコン、インターホン、Wi-Fi機器、宅配ボックスなどが対象です。

たとえば、9戸のアパートで設備を整える場合、全体で350万円〜400万円ほど建築費が上がるというケースもあります。オーナーにとっては、初期コストの増加は無視できない課題です。

都市ガスへの切替が加速する

プロパンガス会社の設備無償提供が難しくなったことで、「都市ガスへの切替」が進んでいます。都市ガスはプロパンガスに比べて料金が安く、設備提供の縛りもありません

そのため、初期費用が多少高くても、運用コストの面では有利になります。また、都市ガス物件は入居者からの人気も高いため、選ばれやすい物件になる傾向があります。

家賃アップでコストをカバーできる

初期コストの増加に対して、家賃に反映させるという考え方もあります。とくに都市ガスを導入している物件では、1戸あたり2,000円〜3,000円ほど家賃を上げても、入居に影響しない地域も見られます。

都市ガスに切り替えることで光熱費が抑えられ、入居者の満足度が高まるケースも少なくありません。そのため、家賃設定を見直すことで設備費の回収につながる可能性があります。たとえば、月3,000円の家賃アップで9戸ある場合、年間で約32万円の収入増となります。

この収益を物件の利回りに反映させることで、投資価値を維持・向上させることも可能です。

プロパンガス法改正|入居者にとってのメリット

プロパンガス法改正|入居者にとってのメリット

プロパンガス法の改正によって、入居者の負担や不安も軽減されていくと見込まれています。一方で、すぐにすべての物件に変化があるわけではないため、注意すべき点もあります。

高すぎるガス代が是正される見込み

これまでプロパンガスのガス代は、設備費用が上乗せされていたため、都市ガスに比べて割高でした。今回の法改正で、関係のない設備費用が料金に含まれることが禁止されたことで、不透明だった料金体系が見直されます

将来的には、ガス代の適正化が進み、入居者の金銭的な負担も軽くなっていくことが期待されます。

自由にガス会社を選べる可能性も

これまでは、物件ごとにガス会社が決まっており、入居者はガス会社を選べませんでした。今回の法改正では、事前に契約ガス会社や料金が提示されるようになるため、物件選びの基準として比較しやすくなります

今後、エリアや物件によっては、ガス会社を自由に選べるケースも増えるかもしれません。

情報の見える化で「選びやすさ」が向上

契約前にガス料金や会社名が提示されるようになることで、ガス料金も家賃や設備と同じように「比較の対象」となります。とくに月々のランニングコストを重視する入居者にとっては、大きな判断材料になります。

物件情報の「見える化」が進むことで、ガス代の不満やトラブルも減っていくでしょう。

プロパンガス法改正で見える賃貸業界のこれから

プロパンガス法改正で見える賃貸業界のこれから

今回は、2024年に施行されたプロパンガス法改正の内容と、その背景、関係者への影響について解説しました。法改正は、これまで見えにくかった料金体系や契約の仕組みにメスを入れ、「透明性」と「公平性」を高める取り組みです。

入居者にとっては、高額なガス代や契約の不自由さといった不満が解消に向かうきっかけとなり、安心して物件を選べる環境が整っていくでしょう。オーナーや不動産会社にとっては、設備提供の負担やコストアップという課題もありますが、都市ガスへの切替や家賃調整によって、新たな戦略が立てやすくなる面もあります。

今後は、「選ばれるガス会社」「選ばれる物件」を目指す動きが加速し、賃貸業界全体のサービスの質が一段と高まることが期待されます。暮らしに身近なガス契約だからこそ、この変化を前向きに活かしていきたいですね。


プロパンガス改正ルール解説!

ラルズネット編集部
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