
不動産管理業界は「コンサル力」で差がつく!生き残るための鍵とは?
賃貸住宅市場が成熟期を迎えるなか、不動産管理業界にも大きな変化が訪れています。新築供給の減少や築古物件の増加、賃貸物件オーナーの高齢化など、時代とともに管理会社に求められる役割は多様化。このような現状のなか、カギとなるのは「コンサル力」です。
動産管理会社は「生き残る会社、生き残らない会社」の二極化時代に突入。コンサル力を上げて他社との差別化を図り、優位性を高めていきましょう。
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不動産管理業界の現状
全国にある賃貸住宅は約1,906万戸、そのうち約1,530万戸(約80%)が民間の賃貸住宅です。このうち、約1,174万戸は管理委託(約77%)されており、残りの約356万戸は賃貸物件オーナーが自ら管理する自主管理(約23%)となっています。
大手管理会社20社が管理する戸数は合計で約505万戸、委託管理全体の43%以上を占めているのが現状です。大手の寡占が進む一方で、残る669万戸を4,400社以上の管理会社が分け合っており、中小企業間での競争は激化しています。
※平成30年住宅・土地統計調査(総務省)、日本賃貸住宅管理協会、国土交通省、賃貸住宅新聞などの情報より推定値を算出
賃貸物件供給数の減少と中古市場の拡大
建築着工統計調査によれば、1987年には約173万戸の住宅が新たに供給されていたものの、2023年には約86万戸とピーク時から半減。賃貸住宅の供給数は1987年の89万戸から、2023年には35万戸まで減少し、供給の数は40%ほどになっています。
また、直近20年間で一番供給された2006年には住宅全体で129万戸、賃貸物件で54万戸。賃貸物件に関しては、20年間で約20万戸も減少しています。さらに、2030年には約70万戸、2040年には49万戸と予想されています。新築住宅供給の減少に伴い、「建てて管理戸数を増やす」戦略は通用しにくいのが現状です。
築古物件の増加が意味すること
総務省の「平成30年住宅・土地統計調査」によれば、築20年以上の賃貸物件は全体の55%以上、不明を含めれば60%超が築古物件です。今後は、築30~40年を超える物件が当たり前になっていくでしょう。このような環境のなか、管理会社には「脱スクラップアンドビルド」が求められています。
顧客ニーズと主な対策
国土交通省の「賃貸住宅管理業務に関するアンケート調査」によると、賃貸オーナーが抱える不安は主に以下の3つです。
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不動産管理会社は、3つの不安に対する対策を行うことで、顧客である賃貸物件オーナーのニーズに応えられるでしょう。主な対策は、以下のとおり。
不安 |
主な対策 |
空室の増加 |
現在、行っている管理業務の質を高める。賃貸物件オーナーからの信頼性アップにつながる。 |
相続・承継 |
相続に関する専門性を高めて「相続コンサル」を行う。管理契約の維持だけではなく売却案件の獲得にもつながる。 |
老朽化の対応・長期修繕計画の策定 |
リフォームだけではなく長期修繕計画も立案などの「建物コンサル」を行う。建物の健康管理が行える「賃貸住宅メンテナンス主任者」の育成も有効。他社との差別化につながる。 |
このような顧客ニーズへの対策が、今後の不動産管理業界を生き抜くために必要だといえます。
顧客ニーズが生まれる背景
顧客ニーズが生まれている背景は、以下のとおりです。
背景 |
詳細 |
人口減少から人口爆縮へ |
2060年までに人口が約3,700万人減少し、人で部族になっていく時代に突入。地域によっては賃貸需要の低下により、より良い物件づくりが求められる。 |
大相続時代 |
団塊世代の800万人(1947~1949年生まれ)が後期高齢者へ。事業承継や相続の増加が予想される。 |
建物の長寿命化 |
築20年以上の物件が日本全国で5割超になっている。築30年以上の物件が当たり前の時代へ。 |
新築による需要が見込めないなか、今後の大きなテーマは「既存物件をいかに維持・強化するか」です。入居率や建物の維持・管理、次世代への承継までを見据えたサポートが、賃貸物件オーナーのニーズを捉え信頼獲得につながるでしょう。
これからの不動産管理業に求められる「コンサル力」
今後、賃貸管理業界は縮小していくことが予想されています。小規模企業の減少やM&Aの統廃合などにより、「生き残る会社・生き残らない会社」の二極化時代に突入するでしょう。このような二極化時代を生き残るためには「コンサル力」が必要不可欠です。「相続コンサル」や「建物コンサル」などの専門性を取り入れることで、他社との差別化を図れるようになります。
「コンサル力」と聞くと難しそうに感じるかもしれません。まずは賃貸物件オーナーとの面談時に「困っていることはありませんか?」と尋ねるところから始めましょう。小さな相談からでも対話のなかで課題を把握し、それに対する提案を積み重ねることで、コンサル力は自然と磨かれていきます。特別な資格や知識がなくても、「賃貸物件オーナーの話をよく聞く」ことこそが、最初の一歩です。
二極化時代に生き残るための「コンサル力」を磨こう!
不動産管理業界は、築古物件の増加と新築供給の減少により、大きな転換期を迎えています。今後は新築で「建てる」から既存物件を「維持・管理する」へ。このような時代に賃貸物件オーナーが抱える空室・相続・老朽化といった不安に寄り添うことで、信頼の獲得や他社との差別化を図ることが可能です。不動産管理会社は「相続コンサル」や「建物コンサル」といった専門性を備え、コンサル力の強化をしていくことが、二極化時代の競争を勝ち抜くカギとなるでしょう。