給排水管設備の修繕ポイント|劣化サインや修繕方法、交換費用とは?
建物の設備は年数とともに劣化していきます。とくに「給排水管」は修繕時期の判断が難しくトラブルが起きやすくなるため、修繕ポイントの理解が必要不可欠です。今回は給排水管に焦点を当てて、注目する理由や劣化現象、修繕方法、費用まで解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.給排水管に注目する理由
- 2.給排水管の修繕方法と時期
- 2.1.更生工事
- 2.2.更新工事
- 2.3.専有部の修繕周期も改定
- 3.給排水管の劣化現象と修繕ポイント
- 3.1.給湯管の劣化現象と修繕ポイント
- 3.2.湯管の劣化現象と修繕ポイント
- 3.3.排水管の交換コスト
- 4.給排水管の交換コストを抑える方法
- 5.給排水管の修繕ポイントを抑えてトラブルを回避しよう!
給排水管に注目する理由
建物の設備には給水ポンプやエレベーター、インターホン、室内設備(エアコンや給湯器)などがあります。設備のなかでも、修繕時期を判断するのが難しいのは給排水管です。給排水管の劣化は目に見えてわかる部分の劣化とは異なり、人目に触れない配管の内部が時間とともに劣化します。
給排水管は劣化状況が確認しにくいため、修繕時期の判断や対応が遅れやすい部分です。給排水管の劣化にも注目し、修繕時期の目安を事前に把握しておくことが重要といえるでしょう。給排水管の修繕時期や方法については、国土交通省の「長期修繕計画ガイドライン(約3年前に改定済み)」をもとに解説します。
給排水管の修繕方法と時期
給排水管の修繕方法は、主に以下の2つです。
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修繕時期とあわせて、それぞれ解説します。
更生工事
更生工事は、配管を交換せず内部の修繕・強化する方法です。配管内部を研磨して劣化やサビを除去し、内部をコーティングして防錆や耐久性を向上させます。ガイドラインの改定前は「15年に1回」が修繕の目安とされていたものの、改定後は「19〜23年」に延長されました。従来よりも修繕頻度が減り、計画が立てやすくなっています。
更新工事
更新工事は、給排水管そのものを交換する方法です。大掛かりな修繕になるものの、劣化した配管を新しいものに取り替えるため、安全性や耐久性が大幅に向上します。ガイドライン改定前の修繕周期は「30年に1回」が目安でした。しかし改定後は「30〜40年」に延長され、物件の状態によって柔軟な対応が可能になっています。
専有部の修繕周期も改定
ガイドラインの改定において最大のポイントは、専有部(各部屋内)の修繕周期が新たに設定されたことです。今までは専有部の修繕周期が設定されていなかったものの、改定により「28〜32年(おおむね30年)」と定められました。
定められた理由は、給湯管からの漏水が現実的に多いためです。お湯が流れる給湯管は長期間使用すると劣化が進み、漏水事故につながるリスクが高まります。専有部の修繕にも計画的な対応が求められています。
給排水管の劣化現象と修繕ポイント
給排水管には、それぞれに特有の劣化やトラブル発生の可能性があります。とくに劣化現象や修繕のポイントについて、給湯管と排水管に分けて押さえておきましょう。
給湯管の劣化現象と修繕ポイント
給湯管はお湯を流すための配管で、お湯特有の性質(気泡が発生しやすい)により劣化しやすい特徴があります。給湯管の主な劣化現象は「ピンホール漏水」です。お湯の流れにより配管内で気泡が発生することで、配管の曲がり部分(エルボー)にぶつかり、経年により小さな穴(ピンホール)を開けることがあります。
室内に水漏れが発生する事故で最も多いとされているのが、ピンホール漏水です。ピンホール漏水が1箇所でも発生した場合、配管全体が同様に劣化(とくにエルボー部分)している可能性が高いでしょう。複数箇所で水漏れすれば同じ建物内の他住戸でも同様のトラブルが起きてしまうため、早期に修繕を行う必要があります。
しかし給排水管の修繕には高額なコストがかかる場合があるため、適切なタイミングを把握しておくことが大切です。適切な修繕タイミングと方法としては、漏水事故の発生時や退去時やリフォーム時に、給湯管全体を交換することが挙げられます。
湯管の劣化現象と修繕ポイント
排水管も劣化や詰まりによって、トラブルになる可能性があります。通常は配管がまっすぐであれば排水がスムーズに流れるため、詰まりのリスクは低くなるでしょう。しかし、エルボー(曲がり部分)が多い場合、ゴミや汚れが溜まりやすく詰まりの原因となります。
詰まりが発生すれば、排水が逆流することで漏水事故を引き起こす可能性が高くなるため、早期に排水管の清掃を行う必要があるでしょう。ただし、適切な方法で清掃を行わなければトラブルにつながる可能性があるため、注意しなければいけません。
清掃中に起こりうるトラブルとしては、清掃用の機械が配管に当たって傷が付いたり、洗浄ノズルが外れて排水管内に詰まったりすることが挙げられるでしょう。そのほか、高額な清掃費を支払っても、排水管の奥まできちんと清掃されていないトラブルもあります。このようなトラブルを避けるためには清掃作業の確認と見届け、信頼できる修繕会社に依頼することが重要です。
排水管の交換コスト
給排水管の交換コストには、高額な費用がかかります。共有部と専有部の配管交換は、1世帯あたり70〜90万円が一般的です。また10世帯の建物の場合は、全体で約1,000万円のコストがかかる可能性もあります。
このように高額な費用がかかるため、「建物の売却」や「立て替え後に収益性の高い物件を建築する」といった選択肢もあります。長期的に建物を保有する予定がある場合は、経済的な方法で配管交換を進める必要があるでしょう。
また物件タイプによって交換費用が異なります。ワンルームタイプの場合は、配管の長さが短いことから比較的安価に交換することが可能です。ファミリータイプの場合は配管の長さが長くなるため、ワンルームタイプよりも費用が高めになることを覚えておきましょう。
給排水管の交換コストを抑える方法
給排水管の交換コストを抑える方法は、退去時の原状回復工事やリノベーション工事と同時に交換を行うことです。内装工事と配管交換を同時に行うことで、70~90万円ほどの費用が15〜30万円まで抑えられる可能性があります。
また建物の短期保有や売却予定がある場合は「配管を応急的に補修する更生工事」、長期保有を予定している場合は「配管を新規に交換する更新工事」を選ぶと経済的です。建物の保有計画に応じて、どちらが適しているかを検討してみてください。
給排水管の修繕ポイントを抑えてトラブルを回避しよう!
給排水管は建物の設備のなかでも、目に見えにくい部分が劣化していくため、修繕時期の見極めが難しいといわれています。給排水管の修繕を疎かにするとトラブルが起きやすくなるため、以下の修繕ポイントを知ることが大切です。
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また給排水管の交換コスト(1世帯当たり70~90万円)は高額です。しかし内装工事と同時交換することで、コストを約3分の1まで抑えられる可能性があります。給排水管の適切な修繕を行い、トラブルに備えましょう。