建物は何年持つ?木造とRC造の耐用年数や平均寿命から見る修繕計画
建物は種類によって耐用年数や平均寿命が異なります。長期保有を目的としている場合は、建物の種類ごとの耐用年数や平均寿命を把握して、長期的な修繕計画を立てることが大切です。今回は木造とRC造における耐用年数と平均寿命、修繕計画のポイントを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
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木造建物の耐用年数と平均寿命
木造建物の法定耐用年数は「22年(アパート)・33年(住宅)」です。ただし、法定耐用年数は税法上の数字であり、実際の平均寿命とは異なる点に注意しましょう。今回は2011年に行われた、早稲田大学の小松教授による「建物の寿命と耐用年数」をもとに解説します。
残存率(取り壊されていない建物の割合)を50%としたとき、木造住宅の平均寿命(使用できる平均年数)は「約65年」です。木造共同住宅の平均寿命は「約50年」という結果になっています。
建物は使用している素材や構造、定期的なメンテナンス(点検や修繕など)を行うことで寿命が延びやすくなります。日本最古の木造建物である「法隆寺」が良い例でしょう。
法隆寺は耐久性の高い檜(ヒノキ)を使用して地震に強い構造で造られており、定期的なメンテナンスを行い続けてきた結果、約1300年以上も現存しています。
RC造建物の耐用年数と平均寿命
RC造(鉄筋コンクリート造)建物の法定耐用年数は「47年」です。しかし構造や材質から算定される物理的寿命は120年、適切なメンテナンス(外装仕上げ等)を行えば150年まで伸ばせる可能性があります。
RC造集合住宅の先駆けといえる「同潤会アパート(上野下)」は1929年に建築され、戦前の建築技術にもかかわらず84年間も現存していました。
※画像は同潤会アパート(三ノ輪)
現在の建築技術を考慮した場合、RC造マンションの耐久性は優に100年以上持つといえるでしょう。一方でRC造住宅の平均寿命は「約68年」とされており、木造住宅(約65年)と大差がないという興味深い結果もあります。
木造でもRC造でも共通していえることは、「建築技術の進歩や定期的なメンテナンス次第で寿命は延びる」ということです。
参考元:建物の寿命と耐用年数
経済的寿命と時代のニーズ
建物の寿命のなかには「経済的寿命」もあります。経済的寿命とは、経済的価値が維持できなくなる時期のことです。建物が物理的に使用できたとしても「30年1世代」というサイクルの現代においては、築年数が経つほど経済的価値が減っていきます。
また建物が時代のニーズを満たせるかどうかも、経済的価値に大きな影響を与えるでしょう。現代の建物には「高断熱・高気密・高耐震・オール電化・スマートホーム」などのニーズが求められています。
時代のニーズを満たせない建物は需要が低くなる傾向にあるため、場合によってはリフォームや建て替えの必要が出てくるでしょう。入居者の獲得や建物の売却を検討している場合は、経済的寿命にも注目してみてください。
平均寿命から見る適切な修繕計画
修繕計画は平均寿命を考慮したうえで、適切に実行していく必要があります。また建て替えを検討する際は、必要な事前準備を行っておくことが大切です。修繕計画の目安や建て替え時の準備について解説します。
平均寿命を延ばすための修繕計画
木造建物やRC造建物の総合的な寿命(平均寿命や経済的寿命など)を延ばすには、適切な修繕計画が必要不可欠です。木造建物もRC造建物も、平均寿命や経済的寿命を考慮すれば、60〜70年というスパンで修繕計画を立てるのが好ましいといえます。
短期的なメンテナンスに加えて、15~20年に1度は外壁・屋根・ベランダ・配管などの点検や大規模修繕も行いましょう。長期的な修繕計画のなかで建物の状態を見ながら、必要な修繕工事を行っていくことが平均寿命を延ばすためのポイントです。
建て替え時に行っておきたい準備
木造建物・RC造建物ともに平均寿命が65〜68年ほどなので、建物の状態次第では建て替えも視野に入ってきます。建て替えを視野に入れて長期保有する場合は、建て替え費用や入居者の立ち退き費用などを用意しておきましょう。
また入居者の立ち退きに対しては、賃貸借契約を「定期借家契約(更新のない賃貸借契約)」へ変更するといった対応も必要になる可能性があります。事前に建て替えや立ち退き費用、入居者への対応などを把握して準備すれば、スムーズな建て替えが行えるようになるでしょう。
建物の寿命を理解して適切な修繕計画を立てよう!
建物の平均寿命は木造住宅で約65年、RC造住宅で約68年です。ただし平均寿命は、法隆寺や同潤会アパートの事例のように「建築技術の進化・メンテナンス状況」によって延びる可能性があります。長期保有を目的とする場合は、修繕計画に沿った定期的なメンテナンスが必要です。
また入居者の獲得や売却を視野に入れる場合は、建物の経済的寿命にも注目しましょう。経済的寿命は、物理的寿命に問題がなくても時代のニーズに合わなければ低下していきます。経済的寿命を延ばすのであれば、建て替えやリフォームといった対策が必要です。
建物の寿命を延ばして有効活用するためにも、適切な修繕計画を立てて実行していきましょう。