
築古(20年超)物件6割時代へ|不動産会社が考えるべき営業戦略
近年、「築古物件」と呼ばれる築20年以上の住宅が、不動産市場において過半数を占める時代に突入しました。これまで「新築信仰」が根強かった日本の不動産市場も、本格的な「築古時代」を迎えつつあります。築古が当たり前になった今、どのように物件の価値を見出し、顧客に提案していくべきかが重要です。
本記事では、以下の内容を解説します。
築古物件6割時代の営業戦略を学ぶことで、顧客への提案力向上により他社との差別化を図れるようになるでしょう。ぜひ参考にしてみてください。
築古物件が増える背景
築古物件が増加している背景として、過去の大量供給が挙げられます。1990年代のバブル期には、住宅供給戸数が年間173万戸(賃貸住宅は89万戸)と、当時の需要を上回る勢いで供給されていました。
しかし、2023年には住宅供給数が82万戸(賃貸住宅は34万戸)と大きく減少。新規供給が抑制されたことで、過去に建てられた物件の築年数が進み、結果として築古物件が市場へ多く出回るようになりました。
総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査」によると、2023年には住宅全体で64%、持家で69%、借家で62%が築20年以上という結果が出ています。また、5年前の「平成30年住宅・土地統計調査」と比較しても4~5%上昇しており、築古化は今後も進行していくことが予想できるでしょう。
築古物件を取り巻く不動産価値の変化
不動産価値は年々、上昇傾向にあります。とくに、分譲マンションの価格上昇が住宅全体の平均価格を引き上げている状況です。分譲マンションは好立地に建てられていることが多く、地価の上昇や利便性の高さが価格上昇の要因になっています。一方で、戸建てや住宅地は、過去と比べて緩やかに上昇したものの、最近は横ばい傾向です。
賃貸を含む商業用不動産の不動産価格指数は、住宅とは異なる動きを見せています。オフィスや商業地は元々価格が高く、大きな変動はあまり見られません。倉庫や工場など郊外立地の物件も、価格変動は小さめといえます。
一棟アパート・マンションの価格は、右肩上がりだったものの、最近は横ばい傾向です。都心を中心に家賃が上昇している一方で、価格には限界があります。たとえば、利回りが1%台に低下すると魅力が薄れ、価格も頭打ちになることが予想できるでしょう。
築古物件6割時代の営業戦略
築20年以上の物件が住宅市場の6割を占める現在、不動産営業には「築古時代に即した視点」が求められます。新築物件は供給が減少しており、資材・人件費の高騰やプロパンガスに関する法改正の影響で建築コストが上昇し、結果として利回りが低下する傾向に。だからこそ、適正な家賃で収支が成り立つ新築物件は「今だからこそ買い」と説明しやすいでしょう。
一方で築古物件の管理やメンテナンスは、資産価値や安全性を左右する要素として重要です。分譲マンション業界では、マンション適正評価制度のように管理の質を「見える化」する取り組みも進んでいます。管理やメンテナンスの重要性は、今後もますます高まっていくでしょう。
また、築年数の経過は基本的に価格下落とリンクするため、将来的な売却や買い替えを見据えた出口戦略の提案が求められます。築古・新築それぞれの特性を理解したうえで提案を行うことが、営業の差別化に直結するでしょう。
築古物件増加を見据えた営業戦略で差別化を!
築古物件が6割を超える現在、不動産営業には「新築・築古」それぞれの価値を見極めた柔軟な営業戦略が重要です。新築物件は供給減とコスト上昇により希少性が高まっており、築古物件は管理やメンテナンスが資産価値を大きく左右します。
このような市場の変化を正確に捉え、出口戦略も含めた提案を行うことで、顧客の信頼を得られるでしょう。今後の不動産営業では、「築古時代」を前提とした目利き力と提案力を意識した営業戦略が、成約の鍵を握ります。