住宅の耐震基準と改修の重要性~不動産業界に求められる役割とは~
世界でもトップクラスの地震大国である日本。2024年1月1日に発生した能登半島地震は、住宅の耐震基準や改修の必要性を再認識させる契機となりました。今回は、耐震基準の概要と進化、耐震改修の重要性、不動産業界の役割について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次[非表示]
- 1.耐震基準の変遷
- 1.1.旧耐震基準(1950年導入)
- 1.2.新耐震基準(1981年導入)
- 1.3.現行基準(2000年導入)
- 2.耐震診断の必要性
- 3.耐震改修の方法と費用
- 4.不動産会社の役割
- 5.耐震への理解を深めて対策をしよう!
耐震基準の変遷
日本の耐震基準は、地震の歴史とともに変化してきました。まずは耐震基準の基礎知識として、どのように強化されてきたのかを見ていきましょう。
旧耐震基準(1950年導入)
旧耐震基準は1950年に建築基準法の一環として導入され、1981年以前に建てられた建物が該当します。旧耐震基準では、震度5程度の地震に耐える設計が求められていたものの、十分な安全性が確保されていませんでした。実際、旧耐震基準の建物は耐力壁(垂直方向と水平方向の強度を高める壁)が少なく、構造的な弱点が指摘されています。
たとえば、能登半島地震で大きな被害を受けた珠洲市の住宅65%以上が、旧耐震基準に基づいて建てられていました。能登半島地震の発生により、旧耐震基準の建物に対する改修の必要性が浮き彫りになっています。
新耐震基準(1981年導入)
新耐震基準は1981年に導入され、震度7程度の地震にも耐えられる設計が求められるようになりました。新耐震基準では、耐力壁の配置や量の強化が行われ、建物全体の耐震性が大幅に向上。
しかし、能登半島地震では新耐震基準の建物であっても倒壊が報告されています。新耐震基準の建物が倒壊した事実は、繰り返しの地震で建物が徐々に劣化し、耐震性能が低下する可能性を示しました。新耐震基準の建物であっても、定期的な耐震診断と必要な補修が必要不可欠です。
現行基準(2000年導入)
2000年に導入された現行の耐震基準は、阪神淡路大震災の教訓を反映し、さらに強化されました。現行基準では、耐力壁の配置や接合部への金具取り付けが義務化され、建物全体の耐震性能が向上しています。また、耐震設計は地盤条件も考慮するようになり、より強化されました。
2000年以降の住宅は耐震性が高いといわれている一方で、東日本大震災や熊本地震などを経て、さらに設計基準の見直しが行われています。耐震基準の見直しだけではなく、既存住宅の耐震性を向上させる取り組みも重要です。
耐震診断の必要性
耐震診断は、建物の耐震性能を評価し、必要な補強箇所を特定するために必要です。とくに旧耐震基準や耐震性に不安がある物件については、耐震診断の実施が推奨されます。
耐震診断の費用は10万~20万円ほどです。一部の自治体では診断費用の補助を行っているため、行政の窓口で確認をしましょう。金融機関によっては、耐震診断の実施を融資条件としている場合もあります。
耐震改修の方法と費用
耐震改修の方法は、主に3つです。それぞれの費用とともに、改修事例もあわせてみていきましょう。
事例1:屋根の軽量化 |
屋根を軽量な素材に変更。 工事費:114万円(補助金50万円・自己負担64万円) |
事例2:壁の補強 |
耐力壁の追加や補強、外付けの耐震フレーム設置や基礎の補修。 |
事例3:耐震シェルターの設置 |
室内に耐震シェルターを設置。 |
多くの自治体では、耐震診断や改修工事に対する補助金を交付しています。補助金額は地域や工事内容によって異なるものの、一般的には50万~100万円ほどです。補助金を利用することで、改修費用の負担を大幅に軽減できるでしょう。
不動産会社の役割
不動産会社には、物件を紹介する際に耐震基準を明確に説明する責任があります。建築確認申請書の日付を確認し、物件が「旧耐震基準・新耐震基準・現行基準」のどれに該当するかを把握しましょう。
さらに、顧客に耐震性の重要性を説明し、必要に応じて耐震診断や改修を提案することも重要です。自治体や専門家と連携し、耐震改修の事例や助成制度の情報を提供することも求められます。
不動産会社が役割を意識して行動することで、耐震性の向上に寄与できるでしょう。耐震性の向上は、建物の価値を高めるだけでなく、災害時の安全性を確保するための重要な要素です。不動産会社は顧客の長期的な利益を考え、安全性の確保と資産価値を維持するための提案を行うことが大切だといえます。
耐震への理解を深めて対策をしよう!
日本の耐震基準は、過去の地震を教訓に進化を続けてきました。しかし、既存の住宅については耐震診断や改修が依然として重要な課題です。また、耐震診断や改修には高額な費用が発生するため、補助金の活用が必要不可欠といえるでしょう。
不動産会社には、耐震への理解を深めるとともに、顧客が安心して暮らせる住環境を提供する役割が求められます。日本が地震大国であることを再認識し、具体的な耐震対策を進めることが重要です。